ダンテの『神曲 天国篇』の関連著作
アウグスティヌス『告白』
4世紀末に書かれた本書は、アウグスティヌスの回心と信仰の旅を描いた自伝であり、西洋文学における自伝というジャンルを確立した記念碑的作品として知られています。『天国篇』と同様に、『告白』は物質世界を超越した魂の救済と神への到達を主題としています。アウグスティヌスは、自身の罪深き過去から神への愛と信仰へと至る内面の葛藤を赤裸々に告白し、人間の有限性と神の無限なる愛の対比を鮮やかに描き出しています。
ボエティウス『哲学の慰め』
6世紀初頭に著された本書は、ローマ帝国末期の政治家ボエティウスが、反逆罪の嫌疑をかけられ投獄された際に、哲学と対話することで運命の不条理や死への恐怖を克服しようとする様を描いた作品です。『天国篇』におけるダンテの旅が、詩人ウェルギリウスの導きによってなされるように、『哲学の慰め』においても、擬人化された「哲学」がボエティウスを絶望の淵から救い出し、理性と知性によって真の幸福へと導きます。
トマス・アクィナス『神学大全』
13世紀後半に書かれた本書は、イタリアの神学者トマス・アクィナスによって著された、スコラ哲学の集大成とされる書物です。『神学大全』は、アリストテレス哲学をキリスト教神学に取り込み、理性による神の認識と啓示による神の認識を統合しようと試みています。『天国篇』においてダンテが、天球を昇るごとに深まる神学的知識と愛の段階を描いているのも、アクイナスの影響が色濃く反映されています。