## ダイシーの法と世論と時間
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ダイシーの法と世論の関係
イギリスの法学者、アルバート・ヴェン・ダイシー(1835-1922)は、主著『法と世論』の中で、立法(特にイギリス議会制定法)と、その背景にある世論との密接な関係を論じました。ダイシーによれば、法律は、為政者や専門家集団の一方的な意図によってではなく、社会全体の共通認識や道徳観、すなわち「世論」を反映して成立します。
ダイシーは、世論を形成する要因として、(1) 政治的イデオロギー、(2) 経済的利害、(3) 社会全体の知的・道徳的水準、などを挙げました。そして、これらの要因が複雑に絡み合い、時代とともに変化していくことで、世論もまた変化し、それに伴って法律もまた変容していくと論じました。
ダイシーの主張は、法の制定過程における世論の重要性を強調するものであり、民主主義社会における法のあり方を考える上で重要な視点を提供しています。
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時間とダイシーの法と世論の関係
時間という要素は、ダイシーの法と世論の関係を考える上で極めて重要です。ダイシー自身が指摘したように、世論は静的なものではなく、時間の経過とともに変化していく動的なものです。
社会における出来事、経済状況の変化、科学技術の進歩、新たな思想や価値観の出現など、様々な要因が時間の経過とともに世論に影響を与えます。例えば、19世紀後半から20世紀初頭にかけての女性参政権運動の高まりは、女性の社会進出や権利意識の高まりを背景に、世論を変化させ、結果として女性参政権を認める法律の制定につながりました。
このように、ダイシーの法と世論の関係は、時間の経過の中で相互に影響を与え合いながら変化していく動的なものであると言えます。