## ターナーのフロンティアの対極
帝国主義と植民地支配の史観
フレデリック・ジャクソン・ターナーのフロンティア thesis は、アメリカの exceptionalism と、未開の地であった西部の開拓がアメリカの民主主義や国民性に与えた影響力を強調した歴史観でした。
しかし、ターナーのフロンティア thesis とは全く異なる視点からアメリカ史を捉え、その対極に位置する歴史観も存在します。それは、アメリカが建国以来、領土拡張と並行して、ネイティブアメリカンに対する征服、アフリカ人奴隷の強制労働、そして太平洋を越えた帝国主義政策を推進してきたという歴史的事実を重視する見方です。
具体的事例
ターナーは、フロンティアにおける白人入植者たちの経験が、アメリカの民主主義や個人主義、自己責任といった価値観を育んだと主張しました。しかし、この見方は、フロンティアにおける先住民に対する暴力や搾取、そして黒人奴隷の強制労働といった負の側面を軽視しているという批判があります。
例えば、ネイティブアメリカンにとって、西部のフロンティアは自由と機会の地ではなく、彼らの土地、文化、そして生活様式を奪われた悲劇の舞台でした。 また、アメリカ南部におけるプランテーション経済は、アフリカから拉致され、奴隷として強制労働に従事させられた人々の犠牲の上に成り立っていました。
代表的な歴史家
ターナーのフロンティア thesis に対する批判は、ハワード・ジンやロクサーヌ・ダンバー＝オルティスといった歴史家によって展開されてきました。
ジンは著書『民衆の歴史』の中で、アメリカ史を、支配層による搾取と被支配層による抵抗の歴史として描き、フロンティア myth を解体しようと試みました。また、ダンバー＝オルティスは、ネイティブアメリカンの視点からアメリカ史を捉え直し、ヨーロッパ人による征服と植民地支配の歴史を告発しました。
現代における意義
ターナーのフロンティア thesis は、アメリカ史学において長らく支配的な地位を占めてきましたが、今日では、その限界や問題点が広く認識されるようになっています。
アメリカ社会における人種や階級、ジェンダーに基づく不平等や格差を理解する上で、帝国主義、植民地支配、そして人種差別といった歴史的事実を直視することが不可欠となっています。