## タキトゥスのゲルマニアと時間
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時間の概念
タキトゥスの『ゲルマニア』において、ゲルマン人たちの時間に対する考え方は、ローマ人とは異なる側面がいくつか描かれています。
まず、ゲルマン人は日や年といった時間の区切りを、自然現象と密接に関連付けて捉えていました。
> “彼らの計算方法は、また、我々とは異なっている。彼らは日数によってではなく、夜の数によって、年を計算するのである。” (『ゲルマニア』11)
このように、ゲルマン人はローマ人のように暦を用いて厳密に時間を管理していたわけではなく、太陽や月の動きといった自然のリズムに寄り添って生活していました。
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時間の過ごし方
時間の使い方に関しても、ローマ人とゲルマン人の間には大きな違いが見られました。
> “彼らは、何事にもまして、怠惰と眠気を愛する。” (『ゲルマニア』15)
タキトゥスは、ゲルマン人がローマ人から見ると怠惰な生活を送っていると述べています。狩猟や戦争といった活動的な時間がある一方で、彼らは多くの時間を休息や宴会に費やしていました。
また、ゲルマン人は未来よりも現在の享楽を重視する傾向にありました。
> “彼らは、現在の快楽を楽しみ、将来の苦痛を予知して耐え忍ぶ、ということができない。” (『ゲルマニア』16)
これは、ローマ人のように未来への展望を持って計画的に行動するというよりは、その瞬間の喜びを大切にするというゲルマン人の価値観を示唆しています。
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時間と社会
ゲルマン人の社会では、時間に対する考え方が彼らの社会構造にも影響を与えていました。
> “彼らは、決まった日に集会を開くという習慣を持たず、緊急事態が発生した場合でも、すぐに集まることができない。” (『ゲルマニア』11)
ローマ人のように厳格な時間管理に基づいて社会が運営されていたのとは対照的に、ゲルマン人の社会では時間の流れはより緩やかで、必要に応じて集会が開かれていました。これは、中央集権的なローマ社会と、より自由なゲルマン社会の違いを反映しているとも言えるでしょう。
このように、『ゲルマニア』における時間に関する記述は、ゲルマン人の文化や社会を理解する上で重要な示唆を与えてくれます。