## タキトゥスのゲルマニアと人間
タキトゥスの『ゲルマニア』は、1世紀後半のローマ帝国に住むゲルマン民族の姿を記録した民族誌です。軍事、社会構造、宗教、文化など、多岐にわたるテーマを網羅しており、当時のゲルマン民族の姿を知る上で貴重な資料となっています。
ゲルマン人の起源
タキトゥスは、ゲルマン人が土着の民族であり、他の民族との混血がほとんどないと考えていました。彼は、ゲルマン人の体格や風習が周辺民族とは明らかに異なっていると指摘し、その独自性を強調しています。
軍事
ゲルマン人は、戦争を名誉なことと捉え、幼い頃から武術の訓練を積んでいました。彼らは、歩兵戦を得意とし、密集隊形を組んで戦いました。また、戦利品を得るために戦うことを喜び、略奪行為も厭いませんでした。
社会構造
ゲルマン人の社会は、氏族を基本単位としていました。氏族の長は、選挙によって選ばれ、戦時における指揮権と平時における司法権を持っていました。また、自由人と奴隷の区別があり、奴隷は主に農業に従事していました。
宗教
ゲルマン人は、多神教を信仰し、太陽、月、星などの自然崇拝を行っていました。彼らは、森や泉など、自然の中に神々の存在を感じ取っていました。また、占いも盛んに行われており、神意を伺うために様々な方法が用いられました。
文化
ゲルマン人は、質素で飾り気のない生活を送っていました。彼らは、狩猟や牧畜を主な生業とし、農業はあまり発達していませんでした。また、歌や踊りを好み、宴会では大いに酒を飲んで楽しみました。
『ゲルマニア』は、当時のローマ人にとって未知の民族であったゲルマン人の実像を伝える貴重な資料です。タキトゥスの観察眼は鋭く、ゲルマン人の文化や社会構造を詳細に描写しています。