## ソーロキンの社会学理論の位置づけ
###
社会学的実在論と観念主義文化論
ピティリム・ソローキン（1889-1968）は、ロシア革命を経験した後、アメリカに亡命し、ハーバード大学で社会学を教えた社会学者です。彼は膨大な歴史的事実を分析し、壮大な文明論を展開しました。
彼の社会学理論は、
* 社会現象を人間の感覚では捉えきれない、超越的な価値や意味に還元して理解しようとする**「社会学的実在論」**
* 文化現象、特に宗教や倫理、芸術などの精神文化を重視する**「観念主義文化論」**
という二つの大きな特徴を持っています。
###
社会文化動態論
ソローキンの社会学の中心には、**「社会文化動態論」**があります。これは、歴史上のあらゆる社会や文化が、感覚的なもの重視の**「感性文化」**、理性的なもの重視の**「理想文化」**、そして両者を統合した**「理念文化」**という三つの様式の間を循環的に変動するという理論です。
ソローキンは、この循環的な変動のメカニズムとして、**「原理の窮極化」**という概念を提唱しました。これは、ある文化がその支配的な原理を極限まで推し進めると、やがてその原理に対する反動が生じ、別の原理に基づく文化へと移行するというものです。
###
主要な概念：感性文化・理想文化・理念文化
* **感性文化**は、物質的な快楽や感覚的な満足を重視する文化です。芸術では写実主義、社会では物質主義や享楽主義が特徴です。
* **理想文化**は、理性や精神性を重視する文化です。芸術では抽象主義、社会では禁欲主義や宗教的熱狂が特徴です。
* **理念文化**は、感性と理性、物質と精神の調和がとれた文化です。芸術では写実主義と抽象主義の融合、社会では倫理観と合理性のバランスが特徴です。
ソローキンは、現代西洋社会を、物質主義や享楽主義が蔓延する感性文化の末期と捉え、そこから理念文化への転換を促すために、宗教や倫理の復興を訴えました。
###
社会学における位置づけと影響
ソローキンの社会学は、その壮大な歴史観と文明論、そして現代社会に対する鋭い批判によって、多くの社会学者に影響を与えました。特に、彼の社会文化動態論は、歴史社会学や比較文明論の分野で高く評価されています。
一方で、彼の理論は、歴史の法則性を過度に強調しすぎているという批判もあります。また、彼の文明類型論は、単純化されすぎているという指摘もあります。
しかしながら、ソローキンの社会学は、現代社会の行き詰まりを克服し、より良い未来を創造するための示唆を与えてくれる重要な理論的枠組みであると言えるでしょう。
Amazonで詳細を見る
読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。