## ソローの市民の不服従の周辺
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ソローと「市民の不服従」
ヘンリー・デイヴィッド・ソロー(1817-1862)は、アメリカの思想家、作家、詩人、博物学者であり、超越主義運動の中心人物の一人として知られています。彼は、マサチューセッツ州コンコードのウォールデン湖畔で自給自足の生活を送った経験を綴った『ウォールデン 森の生活』や、自然と人間の関係を探求したエッセイ『森の生活』などの著作で有名です。
ソローは、1846年、メキシコ-アメリカ戦争に反対する形で人頭税の支払いを拒否し、投獄されました。この経験に基づいて執筆されたのが、彼の代表作の一つであるエッセイ「市民の不服従」(原題:”Resistance to Civil Government”、後に”Civil Disobedience”と改題)です。
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「市民の不服従」の内容
「市民の不服従」の中でソローは、個人の良心にもとづいて行動することの重要性を説き、政府の不当な法律や政策に対しては、非暴力的な抵抗によって立ち向かうべきだと主張しました。彼は、個人が政府の政策に反対する場合、納税を拒否したり、公職を辞任したり、さらには投獄されることも辞さない覚悟を持つべきだと述べています。
ソローは、「最良の政府は、最も統治しない政府である」という有名な言葉を残しています。彼は、政府は本質的に個人の自由を制限するものであるという立場から、政府の権力は可能な限り縮小されるべきだと考えました。そして、個人が自らの良心に従って行動することで、より公正で自由な社会を実現できると信じていました。
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「市民の不服従」の影響
「市民の不服従」は、出版当初はあまり注目されませんでしたが、20世紀に入ってから、マハトマ・ガンディーやマーティン・ルーサー・キング・ジュニアなどの非暴力抵抗運動の指導者たちに大きな影響を与え、公民権運動や反戦運動の中で広く読まれるようになりました。
ソローの思想は、現代社会においても、権力に対する抵抗、個人の良心と責任、市民的不服従の倫理など、重要な問題提起を含んでいます。彼の主張は、国家と個人の関係、民主主義のあり方、市民社会における個人の役割などについて、私たちに改めて考えさせてくれるものです。