## ソローの市民の不服従に匹敵する本
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ガンジー「ヒンドゥー・スワラージ」
1909年にガンジーによって執筆された「ヒンドゥー・スワラージ」は、インド独立運動の指針となっただけでなく、非暴力抵抗運動の哲学を体系的に解説した歴史的名著です。ソローの「市民の不服従」と同様に、国家の不当な法律や政策に対して、市民が自らの良心に基づいて抵抗する権利を主張しています。
ガンジーは、西洋文明を物質主義と暴力に染まったものとして批判し、インド古来の精神性に基づいた新しい社会の建設を提唱しました。その中心となるのが、「サティヤーグラハ」、すなわち「真理の力」という概念です。これは、単なる非暴力的な抵抗運動を超えた、愛と真実を基盤とした、敵対者を含むすべての人々の心を転換させるための実践的な方法論です。
「ヒンドゥー・スワラージ」で展開されたガンジーの思想は、インド独立運動だけでなく、20世紀後半に世界各地で巻き起こった市民運動に多大な影響を与えました。特に、アメリカの公民権運動を率いたキング牧師は、ガンジーの思想に深く共鳴し、その非暴力抵抗の哲学を実践しました。
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マルティン・ルーサー・キング・ジュニア「獄中からの手紙」
1963年、キング牧師はアラバマ州バーミングハムで人種差別に対する抗議活動中に逮捕され、獄中で「獄中からの手紙」を執筆しました。この手紙は、ソローの「市民の不服従」とガンジーの「サティヤーグラハ」の思想を継承し、アメリカの公民権運動における非暴力抵抗の正当性を力強く訴えています。
キング牧師は、人種差別的な法律や慣習を「不当な法律」とみなし、良心に従って抵抗する道徳的義務を説いています。彼はまた、白人穏健派に対して、沈黙は現状維持に加担していると批判し、積極的な行動を呼びかけました。
「獄中からの手紙」は、公民権運動の重要な転換点となり、アメリカの世論を大きく動かすことになりました。キング牧師の非暴力抵抗運動は、その後も続き、1964年の公民権法、1965年の投票権法制定に貢献しました。