## ソフォクレスのアンティゴネの光と影
光：揺るぎない信念と愛
アンティゴネの行動原理は、血縁に基づく愛と、神々の掟に対する揺るぎない信念です。彼女は、たとえそれが国家の法に背くことになろうとも、亡くなった兄を丁重に葬るという神聖な義務を果たそうとします。彼女の行動は、人間にとって普遍的な価値観である家族愛、信仰心の尊さを鮮やかに浮かび上がらせます。特に、クレオンとの対話の中で、彼女は死を恐れない高潔な精神力と、自身の信念を明確に表明しており、そこには人間の尊厳さえ感じられます。
影：対立する正義と悲劇の連鎖
一方、作品はまた、対立する正義の悲劇をも描き出しています。クレオンは、国家の秩序と法を最優先に考え、反逆者であるポリネイケースの埋葬を禁じます。彼にとって、それは国家の安定を守るために必要な決断でした。しかし、彼の強硬な姿勢は、結果的にアンティゴネとの対立を生み、悲劇的な結末を招きます。皮肉にも、クレオンは自身の正義を貫こうとする中で、最愛の息子と妻を失い、深い絶望に突き落とされるのです。
このように、「アンティゴネ」は、人間の持つ崇高な精神と、避けられない悲劇を描いた作品です。光と影の二面性を浮き彫りにすることで、ソフォクレスは、人間存在の根源的な問題を私たちに突き付けていると言えるでしょう。