## ソシュールの一般言語学講義の発想
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言語学の対象の明確化
ソシュール以前の言語学は、歴史的な言語の変化を追うことを中心とした歴史言語学が主流でした。ソシュールは、歴史的な変化を追うことではなく、ある時点における言語システムそのものを研究対象とすることを提唱しました。 言語を「parole(言語活動)」と「langue(言語体系)」に区別し、言語学の対象は変化する「parole」ではなく、一定の規則に基づいたシステムである「langue」であるとしました。
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記号の恣意性と差異性
ソシュールは、言語記号を「シニフィアン(signifiant、記号表現)」と「シニフィエ(signifié、記号内容)」からなるものと捉え、両者の関係は恣意的であるとしました。これは、特定の記号表現と記号内容の結びつきに必然性はなく、社会的な約束事に過ぎないことを意味します。
また、言語記号は他の記号との差異によって成り立つと考えました。 例えば、「木」という記号は、「岩」や「花」といった他の記号との違いによって初めてその意味を持つことができます。
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共時的視点の導入
ソシュールは、言語をある特定の時点におけるシステムとして捉える「共時的」な視点と、言語の歴史的な変化を追う「通時的」な視点を区別し、言語の体系を明らかにするためには共時的な分析が不可欠であると主張しました。これは、歴史言語学が主流であった当時の言語学において、革新的な考え方でした。