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ソシュールの一般言語学講義と時間

## ソシュールの一般言語学講義と時間

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言語活動における時間

ソシュールは言語活動を、時間軸上に展開されるものとして捉えています。彼は言語活動を、話者の内的世界における「ランガージュ」と、社会におけるコミュニケーションの手段としての「ラング」に分けました。そして、この両者を橋渡しするのが「パロール」、つまり具体的な発話行為です。

時間という観点から見ると、「ラング」は時間的に比較的安定したシステムとみなされます。一方、「パロール」は、その時々の状況に左右される、一回限りの行為です。ソシュールは、「ラング」を「共時的」な側面、「パロール」を「通時的」な側面と呼び、両者の対比を通して言語の本質に迫ろうとしました。

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共時性と通時性の対立

「共時性」とは、ある特定の時点における言語システムの状態を指します。一方、「通時性」は、時間経過に伴う言語の変化や発展を意味します。ソシュールは、従来の言語学が通時的な視点に偏っていたことを批判し、共時的な視点から言語を分析することの重要性を強調しました。

彼の主張は、特定の時点における言語システムを理解するためには、時間軸を度外視して、その時点における要素間の関係性に注目する必要があるというものです。例えば、現代日本語を理解するためには、現代日本語における単語や文法の関係性を分析する必要があり、日本語の歴史や変遷は直接的には関係ありません。

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言語の変化と時間の流れ

しかし、ソシュールは通時的な視点を完全に否定したわけではありません。彼は、言語は常に変化するものであり、その変化は時間軸に沿って起こると考えていました。ただし、その変化は「ラング」全体を一度に作り変えるようなものではなく、あくまで個々の発話行為である「パロール」を通じて、徐々に「ラング」に影響を与えるという間接的なものであるとしました。

つまり、「パロール」は「ラング」という時間的に比較的安定したシステムに変化をもたらす、時間軸上の接点として機能していると解釈できます。

このように、ソシュールは時間という概念を軸に、「ラング」「パロール」「共時性」「通時性」といった概念を関連付けながら、言語の本質に迫ろうと試みました。彼の提唱した視点は、その後の言語学研究に多大な影響を与え、現代の言語学においても重要な概念として受け継がれています。

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