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スミスの道徳感情論の評価

## スミスの道徳感情論の評価

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賛成意見

アダム・スミスの主著『道徳感情論』は、出版当時から今日に至るまで、多くの賛同を得てきました。

#### 1. 同情の概念に基づく道徳体系

スミスは、人間には他者の感情を理解し共感する「同情」の能力が備わっていると主張しました。そして、この同情こそが道徳的判断の根底にあるとしました。これは、理性のみを重視した当時の道徳哲学とは一線を画すものであり、人間の感情を道徳の中心に据えた画期的な理論として評価されています。

#### 2. 「公平な観察者」による客観性の担保

スミスは、主観的な感情である同情が恣意的な道徳判断に繋がってしまうことを危惧し、「公平な観察者」という概念を導入しました。これは、特定の立場や感情に偏ることなく、客観的な視点から物事を判断する理想的な観察者のことです。スミスは、同情に基づく道徳判断は、この公平な観察者の視点を内面化することによって、客観性と普遍性を獲得できると考えました。

#### 3. 社会秩序の形成における道徳の役割

スミスは、道徳感情が社会秩序の維持に重要な役割を果たすと考えました。人々は、互いに同情し合い、正義や公正さといった道徳に従って行動することで、社会は安定するとしました。これは、利己的な個人の追求が結果的に社会全体の利益に繋がるという『国富論』で展開された「見えざる手」の概念とも関連付けられています。

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批判意見

一方、『道徳感情論』は、いくつかの点において批判も受けてきました。

#### 1. 同情の限界

スミスの道徳理論は、人間の同情の能力に大きく依存しています。しかし、現実には、全ての人々が同じように同情できるわけではありません。また、自分に近い存在には強く同情できても、見知らぬ他人にはなかなか同情できないのが人間の本音でしょう。このような同情の限界は、スミスの道徳理論の適用範囲を狭めてしまう可能性があります。

#### 2. 「公平な観察者」の曖昧さ

「公平な観察者」は、客観的な道徳判断の基準として重要な役割を担いますが、具体的にどのような存在なのかは明確ではありません。完全に中立な視点など存在し得ないという批判もあります。

#### 3. 『国富論』との整合性

スミスは、『道徳感情論』では道徳を、『国富論』では経済的合理性を重視しており、両者の整合性が問題視されてきました。しかし、近年の研究では、スミスは両者を対立するものではなく、相互に補完し合うものと考えていたという見解が有力になっています。

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