## スミスの国富論の評価
###
出版当時の評価
『国富論』は1776年に出版され、当時のヨーロッパ社会に大きなインパクトを与えました。重商主義が主流であった時代に、自由貿易の利点や政府の役割を限定すべきという主張は画期的であり、多くの支持者を生み出しました。
スコットランド啓蒙主義の流れを汲む思想家であるアダム・スミスは、本書で “見えざる手” や分業の概念を提示し、経済活動における個人の自由と利益追求を重視しました。
###
その後の経済学への影響
『国富論』は経済学という学問分野を確立した記念碑的作品とされ、古典派経済学の基礎を築きました。デヴィッド・リカードやトーマス・マルサスといった後続の経済学者たちに多大な影響を与え、自由主義経済のバイブルとして19世紀の資本主義発展を支える理論的支柱となりました。
###
批判と再評価
一方で、『国富論』は出版以降、様々な批判に晒されてきました。特に、労働価値説や市場メカニズムへの過信、貧富の格差問題などについては、マルクス経済学をはじめとする社会主義経済学からの批判が根強くあります。
20世紀に入ると、ケインズ経済学の台頭により、政府の積極的な経済介入の必要性が唱えられ、『国富論』の自由放任主義的な経済思想は修正を迫られることになりました。
しかし、現代においても『国富論』は、市場経済の基本原則を説いた古典として読み継がれており、その歴史的意義や現代社会への示唆は大きいと言えるでしょう。