## スピノザの神学・政治論の構成
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序論
序論では、スピノザはまず、本書を執筆するに至った動機を述べています。
人間社会における迷信の蔓延、とりわけ宗教の名の下に行われる不寛容と暴力が、人々の理性を蒙蔽し、真の幸福を阻害している現状を憂慮し、それを克服するために本書を著すに至ったと述べています。
また、人間の精神の自由こそが、平和で幸福な社会を実現するために不可欠であると主張し、本書において、聖書解釈と政治論という一見異なる二つのテーマを通して、人間の精神の自由の擁護を試みることを明らかにします。
さらに、伝統的な聖書解釈や政治理論に対する批判的な検討を加え、自らの立場を明確に示します。
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第一部 神学論
第一部「神学論」は、聖書の解釈を通して、当時の宗教的権威に挑戦し、人間の理性に基づく自由な思考の重要性を説いています。
この部分はさらに15の章に分かれており、預言の性質、預言者の本質、預言の選民性、神による啓示の本質、聖書における神の属性、奇跡の解釈、聖書解釈の原則、旧約聖書の作者と編纂、旧約聖書の真正性、律法の目的、律法の儀礼的側面、ヘブライ国家の興亡、キリストの使命、信仰と哲学の関係、といったテーマが論じられます。
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第二部 政治論
第二部「政治論」では、人間の自然権に基づいて、自由で合理的な国家の在り方を論じています。
この部分は7つの章からなり、自然状態における人間、自然権の概念、国家の起源と目的、国家の形態と特徴、最高権力とその限界、民主政の利点、民主政における自由の保障、といったテーマが扱われます。
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未完成
「神学・政治論」は、本来スピノザが構想していたよりも短い形で刊行されました。
第二部「政治論」の第七章までで刊行されており、当初の構想ではさらに議論が展開される予定だったとされていますが、具体的な内容や構成は不明です。