スタンダールの恋愛論を読む前に
1. 時代背景を知る
「恋愛論」は1822年にフランスで出版されました。当時のフランスはナポレオン失脚後、復古王政の時代であり、貴族社会が復活し、自由な思想が抑圧されていました。スタンダール自身もナポレオンを支持していたため、復古王政には批判的でした。「恋愛論」は、このような時代背景の中で、自由な恋愛を追求しようとする人々に向けた、一種の指南書として書かれた側面があります。当時の社会規範や恋愛観、結婚制度などを知ることで、スタンダールの主張する恋愛観をより深く理解することができます。
2. スタンダールの生涯に触れる
スタンダールは、本名アンリ=マリ・ベイルといい、「恋愛論」以外にも「赤と黒」「パルムの僧院」など、多くの小説や批評、自伝などを残した作家です。情熱的で行動的な性格で、数多くの恋愛経験をしたことでも知られています。幼い頃に母を亡くした経験から、生涯を通じて母性への渇望を抱いていたと言われています。スタンダールの生きた時代や経験した出来事、彼の思想や性格を知ることは、「恋愛論」を理解する上で重要な手がかりとなります。
3. 「恋愛」というテーマへの先入観を捨てる
「恋愛論」というタイトルから、現代の恋愛指南書のような内容を想像するかもしれません。しかし、この作品は、ありきたりな恋愛指南書ではありません。スタンダールは、恋愛を「一種の精神の病気」と捉え、その発生から発展、終焉までを、心理学的、社会学的視点から鋭く分析しています。現代の恋愛観とは異なる点も多いため、「恋愛」という言葉に対する先入観や固定観念は捨てて、フラットな気持ちで読み進めることが大切です。
4. フランス文学、恋愛小説への理解を深める
スタンダールは、フランス文学、特に17世紀の古典主義文学の影響を強く受けています。また、「恋愛論」は、恋愛をテーマにした小説の形式を取っており、登場人物たちの恋愛模様を通して、スタンダールの恋愛観が語られます。当時のフランス文学や恋愛小説の特徴、スタンダールの文学的背景などを知っておくことで、「恋愛論」をより深く味わうことができるでしょう。
5. 心構え:難解な部分もあることを受け入れる
「恋愛論」は、200年以上も前に書かれた作品であり、現代の私たちにとって理解しにくい表現や概念が含まれていることがあります。また、スタンダールの独特な文体や論理展開は、時に難解と感じるかもしれません。最初から全てを理解しようとせず、わからない部分があっても気にせず読み進めることが大切です。読み進めるうちに、全体像が徐々に見えてくるはずです。