## スタンダードールの赤と黒の発想
スタンダールの着想源
スタンダールは、現実の事件から着想を得て小説を執筆することで知られています。 「赤と黒」も、1828年にフランスで実際に起こった2つの事件から着想を得たとされています。
事件1：アントワーヌ・ベルテ事件
一つ目は、1827年7月27日に起きた、アントワーヌ・ベルテによる元恋人への銃撃事件です。ベルテは、貧しい家に生まれたにもかかわらず、家庭教師となり、雇い主の夫人と恋仲になりました。しかし、身分の違いから関係は破綻し、逆上したベルテは教会で元恋人を銃撃、自身も自殺を図りました。この事件は、当時のフランス社会に大きな衝撃を与え、多くの新聞や雑誌で報道されました。
事件2：ラファイエット事件
二つ目は、1826年に起きた、ピエール・ラファイエットによる元雇い主夫妻殺害事件です。ラファイエットは、元貴族の家に生まれたものの、フランス革命によって没落し、貧しい生活を強いられていました。彼は、復讐心から元雇い主夫妻を殺害し、死刑判決を受けました。この事件もまた、当時のフランス社会における階級差や社会不安を浮き彫りにするものとして、大きな注目を集めました。
スタンダールの解釈
スタンダールは、これらの事件を単なるセンセーショナルな犯罪としてではなく、フランス社会の矛盾や個人の野心、そして社会における成功と挫折といった普遍的なテーマを描き出すための素材として捉えました。
これらの事件を背景に、スタンダールは「赤と黒」の中で、主人公ジュリアン・ソレルという野心的な青年を創造し、彼が当時の社会の中で上昇しようとあがく姿を描写しました。 「赤」は軍服、「黒」は聖職者の衣装を象徴しており、当時のフランス社会における立身出世の道であった軍人か聖職者のどちらかを選択しなければならなかった当時の若者の苦悩を表現していると言われています。