## スタンダードルの恋愛論の周辺
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作品概要
『恋愛論』は、1822年に出版されたスタンダールの恋愛論考である。原題は “De l’amour”、副題は「生理学的研究を伴う恋愛についての試論」。恋愛を「結晶化作用」など独自の理論を用いて、生理学、心理学、社会学的な視点から分析している。
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執筆背景
スタンダールは、1819年から1821年にかけて、自身の実らない恋愛体験をきっかけに、恋愛について考察を深め始め、本書を執筆した。
スタンダールは、1819年にミラノで裕福な銀行家の妻メチルチルド・デンブローサに恋をするが、彼の想いは受け入れられなかった。失恋の痛手から、彼は恋愛という感情そのりを深く分析しようと試みた。
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構成
本書は、大きく分けて二つの部分から構成される。第一部では、恋愛の発生メカニズムや段階、種類について論じている。第二部では、19世紀初頭のフランスやイタリアにおける恋愛観や風習を、歴史や文学作品などを交えながら考察している。
**第一部**
* 恋愛の誕生
* 結晶化作用
* 恋愛の種類(情熱的恋愛、趣味の恋愛、肉体的恋愛、虚栄心の恋愛など)
**第二部**
* 19世紀初頭の恋愛風習
* 文学作品における恋愛表現
* 恋愛と社会、道徳との関係
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キーワード
**結晶化作用**: 恋愛感情によって、相手の些細な点までもが美化され、理想化されていく心の働き。
**情熱的恋愛**: 相手を熱烈に求め、一心同体になることを望む恋愛。
**趣味の恋愛**: 社会的な立場や経済状況などを考慮した上での、打算的な恋愛。
**虚栄心の恋愛**: 周囲からの評価を気にして、見栄のためにする恋愛。
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影響
本書は、出版当初はあまり評価されなかった。しかし、20世紀に入ってから再評価され、フロイトなどの精神分析学者や、社会学者、文学者に大きな影響を与えた。現代においても、恋愛心理を鋭く分析した古典として、多くの人々に読まれている。