## スタインベックの「エデンの東」の翻訳
翻訳出版の歴史
「エデンの東」は、1952年にアメリカで出版されたジョン・スタインベックの長編小説です。 日本においては、1950年代後半から翻訳出版が始まり、現在までに複数の翻訳者が、複数の出版社から刊行しています。
翻訳における課題
「エデンの東」の翻訳には、いくつかの課題が存在します。
まず、聖書の物語をモチーフとした作品であるため、聖書の文語調をどのように日本語で表現するかが課題となります。旧約聖書の創世記におけるアダムとイブ、カインとアベルの物語を背景に、人間の罪と贖罪、愛と憎しみ、善と悪といった普遍的なテーマが描かれているため、単に現代的な言葉に置き換えるだけでは、作品の持つ重厚さを表現できません。
次に、19世紀後半から20世紀前半のアメリカの、特にカリフォルニアの農村部が舞台となっているため、当時の時代背景や風俗習慣を正確に理解し、日本語で表現する必要があります。当時の社会状況や生活様式、文化などを考慮した上で、適切な言葉を選ぶ必要があります。
さらに、登場人物の多くが、教養の無い労働者階級や農民であるため、彼らの使う口語表現や方言をどのように翻訳するかが課題となります。当時のアメリカ社会における階級差や地域差を反映した言葉遣いを、自然な日本語で表現する必要があります。
翻訳の違いによる解釈の変化
これらの課題に対する翻訳者の解釈や表現の違いによって、作品の印象は大きく変化します。
例えば、聖書の引用部分や宗教的な表現については、原文に忠実に訳すか、あるいは現代の読者にも分かりやすいように意訳するかで、作品の宗教色が大きく変わってきます。また、登場人物のセリフについても、方言や俗語をそのまま訳すか、あるいは標準語に直すかで、登場人物の性格や社会的な立場が異なって伝わります。
このように、「エデンの東」の翻訳は、単に英語を日本語に置き換えるだけでなく、作品のテーマや時代背景、登場人物の性格などを考慮した上で、最適な表現を追求する作業と言えます。