スキナーの科学と人間行動の関連著作
行動主義の父：ジョン・B・ワトソン
ジョン・B・ワトソンは、20世紀初頭に活躍したアメリカの心理学者であり、「行動主義の父」として知られています。彼は、心理学が客観的な科学となるためには、意識や心的イメージといった観測不可能なものよりも、観察可能な行動を研究対象とすべきだと主張しました。
彼の代表作である **『行動主義の心理学』(1913年)** は、従来の内観主義的な心理学を批判し、行動主義の立場から人間の行動を説明することを試みた画期的な著作です。ワトソンは、人間の行動は環境からの刺激に対する反応として形成されると考え、学習によって行動が変化することを実証しました。
特に有名なのは、「アルバート坊やの実験」と呼ばれる恐怖条件付けの実験です。この実験では、生後11ヶ月の乳児アルバートに白いネズミを見せながら、同時に大きな音を鳴らすことを繰り返しました。その結果、アルバートはネズミを見るだけで恐怖反応を示すようになり、恐怖が条件付けられることが示されました。
ワトソンの行動主義は、スキナーのオペラント条件付けの理論にも大きな影響を与えました。スキナーは、ワトソンの考え方を発展させ、行動がその結果によって強化または弱化されるというオペラント条件付けの原理を発見しました。
新行動主義の旗手：クラーク・L・ハル
クラーク・L・ハルは、20世紀半ばに活躍したアメリカの心理学者で、新行動主義と呼ばれる学派を代表する人物です。彼は、行動主義の厳密な方法論を用いながら、学習のメカニズムをより精密に解明しようとしました。
彼の主要な著作である **『行動の諸原理』(1943年)** は、学習に関する包括的な理論を提示したもので、行動主義心理学に大きな影響を与えました。ハルは、学習とは、刺激と反応の間に結合が形成される過程であると考え、その結合の強さを「習慣強度」と定義しました。
また、ハルは、生物学的欲求に基づく「駆力」の概念を導入し、行動の動機づけを説明しようと試みました。彼は、駆力、習慣強度、誘因価値などの変数を用いて、行動の発生を数学的に予測できる理論を構築することを目指しました。
ハルの理論は、その後の学習心理学の研究に多大な影響を与えましたが、人間の複雑な行動をすべて説明できるわけではありませんでした。しかし、彼の厳密な方法論と理論構築への姿勢は、スキナーを含む多くの行動主義者に受け継がれました。
これらの歴史的名著は、スキナーの科学と人間行動を理解する上で重要な背景を提供しています.