ジョイスのユリシーズの世界
ユリシーズの舞台:ダブリン
ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』は、1904年6月16日、アイルランドのダブリンを舞台に、1日の出来事を克明に描いています。当時のダブリンは、イギリス帝国の支配下で、政治的、文化的、宗教的な変化の渦中にありました。小説は、街の喧騒、パブ、通り、家の中など、現実の場所を詳細に描写することで、読者をダブリンのリアルな世界に引き込みます。
登場人物:現実と神話
『ユリシーズ』の主要な登場人物であるレオポルド・ブルーム、その妻モリー、そして若き詩人スティーブン・デダラスは、それぞれがホメロスの叙事詩『オデュッセイア』の登場人物、オデュッセウス、ペネロペー、テレマコスに対応しています。ジョイスは、日常的な登場人物と神話の英雄を対比させることで、普遍的な人間の経験、愛、喪失、探求などを浮かび上がらせます。
時間と意識の流れ
小説は、1日のわずか18時間にわたる出来事を、700ページ以上かけて描写しています。ジョイスは、登場人物の意識の流れを克明に描き出すことで、時間の流れを主観的に表現しています。読者は、登場人物の思考、感情、記憶、感覚を追体験することで、彼らの内面世界に深く入り込むことになります。
言語と実験
『ユリシーズ』は、その革新的な言語表現で知られています。ジョイスは、意識の流れ、内部独白、ストリーム・オブ・コンシャスネスなどの技法を駆使し、登場人物の内面世界をありのままに表現しています。また、スラング、方言、外国語、新造語などを自在に操り、豊かで多層的な言語空間を創造しています。