## ジャスパースの「啓示に面しての哲学的信仰の美」
啓示と理性
ヤスパースにとって、啓示とは、人間の理性では到達できない超越的な真理との出会いを意味します。彼は、伝統的な宗教における教義や神学的議論ではなく、個人が直接的に超越者と向き合う体験としての啓示を重視しました。
哲学的信仰
ヤスパースは、啓示によって与えられる真理は、理性的な証明を超越しているため、盲目的な信仰によってのみ受け入れることができると主張します。しかし、彼にとっての信仰とは、単なる服従や感情的な陶酔ではありません。ヤスパースは、「哲学的信仰」という概念を提唱し、これは、理性的な批判と自己反省を伴う、成熟した信仰のあり方を示しています。
限界状況
ヤスパースは、人間は「限界状況」と呼ばれる、死や苦しみ、罪など、人間の有限性を突きつけられるような極限状態において、自らの存在の根源的な問いを突きつけられると述べます。このような限界状況において、人間は理性的な説明を超えた超越的なものに目を向けざるを得なくなり、啓示を求めるようになるのです。
超越者との対決
ヤスパースは、啓示とは、超越者からの一方的な伝達ではなく、人間と超越者との間の「対決」であると捉えます。人間は、超越者との対話を通じて、自らの有限性を自覚すると同時に、自己を超えた無限の可能性にも開かれていきます。
包括者
ヤスパースは、啓示の源泉となる超越者を「包括者」と呼びます。「包括者」は、あらゆる存在を包み込み、かつ、あらゆる存在を超越した究極的な実在です。人間は、「包括者」との出会いを通じて、自己の有限性を超克し、真の自由と実存へと導かれていくのです。