## シラーの自由についての表現
###
美による自由への道
フリードリヒ・シラーは、1794年に書かれた書簡形式の評論「美学上の手紙」の中で、人間が真の自由を獲得するための道筋として「美」の概念を提示しました。シラーは、人間存在を規定する二つの衝動、すなわち「感性衝動」と「理性衝動」の対立を指摘します。
感性衝動は、人間を自然の一部として捉え、物質世界における感覚的な喜びや欲望に結びついたものです。一方、理性衝動は、人間を精神的な存在として捉え、理性や道徳、自由意志に基づいた行動を促します。
シラーは、これらの二つの衝動が対立したままでは、人間は真の自由を獲得できないと考えました。感性衝動に支配されれば、人間は動物的な本能に囚われ、理性衝動に偏れば、冷酷で機械的な存在になってしまいます。
###
遊戯衝動と美的状態
そこでシラーは、感性衝動と理性衝動を調和させ、人間を真の自由へと導く第三の衝動として「遊戯衝動」を提唱します。遊戯衝動は、感性と理性、物質と精神、必然と自由といった対立を超越し、両者を融合させる働きをします。
この遊戯衝動が作用した状態を「美的状態」と呼びます。美的状態において、人間は感性と理性の束縛から解放され、自由で自律的な存在となります。シラーは、芸術作品を鑑賞することで、この美的状態を体験できると考えました。
芸術作品は、感性的な素材を用いつつも、そこには理性的な秩序や法則が表現されています。そのため、芸術作品を鑑賞することで、人間は感性と理性の調和を体験し、遊戯衝動を喚起されることができます。
シラーは、この美的状態こそが、人間を真の自由へと導く唯一の道であると主張しました。