## シラーの群盗と人間
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愛と憎しみ
「群盗」では、愛と憎しみが複雑に絡み合い、登場人物たちの行動を大きく左右しています。主人公カール・モーアは、恋人アマーリアへの愛と、弟フランツへの憎しみとの間で苦悩します。
アマーリアへの愛は、カールにとって心の拠り所であり、彼を人間的な側面から支えるものです。しかし、フランツの策略によって父親から勘当され、社会から見捨てられたカールは、愛するアマーリアとの未来も閉ざされたと感じ、絶望の淵に突き落とされます。
一方、フランツは、兄に対する憎しみから、陰謀を企てます。彼は、父親への嘘の手紙でカールを陥れ、家督とアマーリアを手に入れようとします。フランツの憎しみは、彼の心を蝕み、最終的には破滅へと導きます。
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自由への渇望
「群盗」は、自由への渇望をテーマの一つとしています。カールは、封建社会の抑圧的な体制や、腐敗した貴族社会に強い憤りを感じています。彼は、自由を求めてボヘミアの森に逃げ込み、そこで盗賊団を結成します。
カールが率いる盗賊団は、貴族や富裕層から財産を奪い、貧しい人々に分け与える義賊として描かれています。彼らは、社会の不条理や抑圧に抵抗し、自分たちの自由を勝ち取ろうとする存在です。
しかし、カールの自由への渇望は、次第に過激化していきます。彼は、目的のためには手段を選ばないようになり、無実の人々を巻き込むことにもためらいを感じなくなります。
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善と悪の境界線
「群盗」では、善と悪の境界線が曖昧に描かれています。主人公カールは、愛と正義のために戦う理想主義者としての側面と、復讐心や破壊衝動に駆られる野蛮人としての側面を併せ持ちます。
カールは、当初は弱者を助け、悪を罰するという義賊としての信念を持っていました。しかし、復讐心や怒りに駆られるうちに、その境界線は曖昧になり、残虐な行為に手を染めるようになります。
「群盗」は、人間の心の複雑さを描き出すことで、単純な善悪二元論では捉えきれない人間の深淵を浮き彫りにしています。