## シュムペンターの資本主義・社会主義・民主主義の入力と出力
シュムペンターの「資本主義・社会主義・民主主義」における入力
シュムペンターの分析は、当時の社会経済状況、先行する経済理論、そして彼自身の思想に基づいた多様な入力を受けています。
第一に、19世紀後半から20世紀前半にかけての時代背景が挙げられます。この時代は、資本主義の隆盛と同時に、貧富の格差拡大や世界恐慌といった資本主義の抱える問題が顕在化し、社会主義運動が台頭した時代でした。シュムペンターは、このような時代状況を背景に、資本主義と社会主義の両方の動態を分析し、その将来を考察しようと試みました。
第二に、古典派経済学とマルクス経済学の影響が挙げられます。シュムペンターは、古典派経済学の均衡理論を批判的に継承し、市場における競争の役割を重視しました。また、マルクス経済学からは、資本主義の矛盾と崩壊の可能性という視点を学び、独自の資本主義発展論を展開しました。
第三に、ウェーバーの影響も重要です。ウェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」から、資本主義の倫理的基盤や企業家精神の重要性を認識しました。
シュムペンターの「資本主義・社会主義・民主主義」における出力
シュムペンターの「資本主義・社会主義・民主主義」は、多岐にわたるテーマを扱っており、その影響は経済学、政治学、社会学など多岐にわたります。
まず、本書で展開された「イノベーション」を重視した経済発展論は、後の経済学に大きな影響を与えました。彼は、イノベーションこそが経済発展の原動力であると主張し、既存の大企業ではなく、新しい技術や製品を生み出す「企業家」の役割を強調しました。この考え方は、現代のイノベーション研究の先駆けとなり、起業家精神や技術革新の重要性が認識されるきっかけとなりました。
また、資本主義の将来に関するシュムペンターの分析も重要な貢献です。彼は、資本主義は inherent な矛盾を抱えており、長期的に安定したシステムではないと主張しました。彼は、大企業による官僚主義化、知的エリート層による資本主義批判の高まり、イノベーションの衰退などにより、資本主義は徐々に「社会主義」へと移行していくと予測しました。この社会主義は、必ずしもマルクスの考えたような革命によって実現するのではなく、資本主義自身の発展の延長線上に現れるものとして描かれています。
さらに、シュムペンターは民主主義についても独自の考察を加えています。彼は、民主主義を「人民の意思」を反映した政治体制という従来の見方を批判し、政治的リーダーを選出するための制度として捉え直しました。彼は、資本主義社会においては、大衆は経済的な問題に関する合理的な判断を下せるとは限らないと考えたため、民主主義はあくまで政治的リーダーを選出するための手続きとみなしたのです。