## シュムペンターの経済発展の理論の思考の枠組み
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静態分析と動態分析
シュンペーターは、経済現象を分析する上で、**静態分析**と**動態分析**を明確に区別しました。
* **静態分析**は、均衡状態における経済のメカニズムを分析するものです。ここでは、データの変化は考慮されず、あたかも写真のように経済の一断面を切り取って分析を行います。
* 一方、**動態分析**は、時間経過に伴う経済の変化や発展を分析するものです。これは、経済を映画のように捉え、その変化の過程や要因を解明しようとするものです。
シュンペーターは、従来の新古典派経済学が静態分析に偏っている点を批判し、**経済発展を理解するためには、動態分析が不可欠である**と主張しました。
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イノベーションの役割
シュンペーターは、経済発展の原動力を**イノベーション**に求めました。イノベーションとは、新しい技術や製品、生産方法、市場、資源などを導入することによって、既存の経済構造に変革をもたらすことです。
彼はイノベーションを以下の5つの類型に分類しました。
1. **新製品の導入**
2. **新生産方法の導入**
3. **新市場の開拓**
4. **新原料供給源の獲得**
5. **新組織の実現(独占の形成や打破など)**
イノベーションは、企業家に実行されることで初めて経済に影響を与えます。企業家は、利益獲得を目的として、新しい組み合わせを実現しようとします。この**企業家の行動が、経済発展の原動力**となるのです。
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循環的な経済発展
シュンペーターは、イノベーションによって引き起こされる経済発展は、**循環的なプロセス**をたどると考えました。
1. まず、企業家によるイノベーションの実行により、新しい製品や生産方法が導入されます。
2. このイノベーションは、一時的な独占的利益をもたらし、他の企業も模倣を始めます。
3. 模倣の普及により、当初のイノベーションによる利益は消滅し、経済は再び均衡状態に戻ります。
4. しかし、この均衡状態は、次のイノベーションがもたらされるまでの**一時的なもの**に過ぎません。
このように、シュンペーターは、経済発展を**「創造的破壊」**のプロセスとして捉え、イノベーションの出現と普及、そして次のイノベーションへの期待という循環が、経済を絶えず発展させていくと考えました。