## シュミットの憲法理論の機能
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ワイマール憲法体制への批判
シュミットは、ワイマール憲法体制における議会主義と政党政治の行き詰まりを、リベラリズムの理念と現実の政治との乖離として批判しました。彼によれば、リベラリズムは、中立的な国家と自由な個人を前提としていますが、現実には、特定の価値観や利益を代表する政治的な集団が存在し、国家権力は常にこれらの集団によって争奪の対象となります。
ワイマール憲法下では、多数の政党が乱立し、連立政権が常態化していました。シュミットは、このような状況下では、議会は国民の統一的な意思を代表する機関としての機能を果たすことができず、政治は妥協と取引の産物となり、国家の目標や方向性が不明確になると主張しました。
さらに、彼は、ワイマール憲法が基本的人権を包括的に保障したことで、国家権力の行使を制限し、政治の有効性を阻害していると批判しました。シュミットは、非常事態においては、国家は国民の安全と秩序を維持するために、迅速かつ果断に行動する必要があり、人権の制限も辞さない決断が求められると主張しました。
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政治的なものの概念
シュミットは、政治の本質を「友敵の区別」に求めました。彼によれば、政治とは、最終的には武力行使の可能性を孕んだ敵対関係に基づくものであり、国家は、自らの存在を脅かす敵対者から国民を守るために、主権を行使し、政治的な決断を下す存在です。
この「友敵の区別」という概念は、シュミットの憲法理論においても重要な役割を果たしています。彼は、憲法制定権力は、政治的な意思決定の最高形態であり、「友敵の区別」に基づいて、国家の基本的なあり方を決定する権力であると主張しました。
また、シュミットは、憲法は、単なる法規範の集合体ではなく、政治的な意志決定の結果として生み出されるものであることを強調しました。彼によれば、憲法は、国民の政治的な統合を象徴するものであり、国家のアイデンティティを規定する役割を果たします。
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立憲主義への懐疑
シュミットは、リベラルな立憲主義が、政治的な現実を直視せず、抽象的な法の支配を過度に重視していると批判しました。彼は、現実の政治においては、法の解釈や適用は、常に政治的な力関係の影響を受け、法の支配は、政治的な闘争の手段として利用される可能性があると主張しました。
さらに、シュミットは、立憲主義が、国家の危機に対応するための柔軟性を欠いていると批判しました。彼は、非常事態においては、憲法の条文にとらわれずに、国家の存続と安全を最優先する必要があり、そのためには、憲法の条文を一時的に停止したり、変更したりする権限を国家に認めるべきだと主張しました。
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