シジウィックの倫理学の方法の表象
直観主義と経験主義の調和
ヘンリー・シジウィックは、その著作『倫理学の方法』において、倫理学における独自の立場を展開しました。それは、一見対立する二つの潮流、すなわち直観主義と経験主義を調和させようとするものでした。シジウィックは、道徳的判断は理性に基づく直観と、経験的事実の考察の両方に依拠すると考えました。
倫理学における三つの方法
シジウィックは、倫理学における主要な方法として、以下の三つを挙げました。
* 直観主義:自己明白な道徳的原理を直観的に把握できるとする立場
* 功利主義:行為の善悪をその結果の幸福量によって判断する立場
* 道徳感覚論:道徳的判断は感情や情緒に基づくとする立場
シジウィックは、これらの方法をそれぞれ詳細に検討し、長所と短所を分析しました。
シジウィックの直観主義
シジウィックは、直観主義を擁護し、道徳的真理を認識するための重要な手段と見なしました。しかし、彼は伝統的な直観主義が抱える問題点も認識していました。例えば、直観によって得られるとされる道徳的原理が、人によって異なる場合があるという問題です。
シジウィックは、この問題を解決するために、「自己明白性」という概念を導入しました。彼は、真に自己明白な道徳的原理は、理性的な考察によって誰でも同意できるはずだと主張しました。
経験主義の限界
シジウィックは、経験主義もまた倫理学において重要な役割を果たすと認めました。経験的な観察は、人間の行動や社会の慣習について貴重な情報を提供してくれます。
しかし、シジウィックは、経験主義だけでは道徳的判断の根拠を十分に説明できないと主張しました。経験主義は、「何が」を記述することはできても、「どうあるべきか」という規範的な問題には答えられないからです。
倫理学における方法論的多元主義
シジウィックは、倫理学における単一の正しい方法が存在するとは考えていませんでした。彼は、直観主義と経験主義、そして他の方法を組み合わせた、多元的なアプローチを提唱しました。
シジウィックは、道徳的真理を追求する際には、様々な方法を用い、それぞれの長所を生かすことが重要だと考えました。