シジウィックの倫理学の方法の入力と出力
入力
シジウィックの倫理学の方法は、道徳哲学に対する独特なアプローチであり、その「入力」は多岐にわたります。
第一に、シジウィックは、**常識的な道徳**を重視します。彼は、人々が日常生活で当然のこととして受け入れている道徳的信念や判断、つまり「盗んではいけない」「約束は守らなければならない」といった一般的な道徳規則を出発点としています。
第二に、シジウィックは、**哲学的な倫理学の伝統**を深く研究し、その成果と問題点を踏まえています。彼は、功利主義、道徳感覚説、カント主義などの主要な倫理思想を検討し、それぞれの長所と短所を分析しています。
第三に、シジウィックは、**経験的・心理学的考察**を取り入れています。彼は、人間の心理、動機、行動様式に関する観察や分析を通じて、道徳的信念や判断の根拠を探求しようとします。
これらの多様な「入力」を総合的に考慮することで、シジウィックは、より確固とした基礎を持つ倫理学の構築を目指しました。
出力
シジウィックの倫理学の「出力」は、彼の主著『倫理学の方法』に体系的にまとめられています。
まず、シジウィックは、道徳哲学の目的を、「我々が行うべき行為」または「我々が目指すべき理想的人格」に関する一般的原理を発見することだと定義します。
次に、彼は、道徳判断の客観的な基準を確立するために、倫理学における三つの主要な方法、すなわち功利主義、直感主義、そして道徳感覚説を批判的に検討します。
シジウィック自身の倫理学は、功利主義と直感主義の要素を組み合わせたものとみなされています。彼は、功利主義の原則、すなわち「最大多数の最大幸福」を支持しますが、同時に、正義や誠実さといった道徳的直観もまた、倫理学の基礎として重要だと考えました。
最終的に、シジウィックは、道徳哲学における根本的な問題、すなわち功利主義の原則と道徳的直観との間の見かけ上の対立を完全に解決することはできないと結論づけます。