## シェーラーの宇宙における人間の位置の世界
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シェーラーの思想における「人間」の位置づけ
マックス・シェーラーは、著書『宇宙における人間の位置』において、人間を他の生物や存在と区別する独自の特性を明らかにしようと試みました。 彼によれば、人間は単なる生物学的進化の産物ではなく、独自の精神的次元を持つ存在です。シェーラーは、この精神的次元を「開かれた精神」と呼び、これこそが人間を他の生物と決定的に異なる存在たらしめていると主張しました。
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「衝動」から「精神」へ:生命の階層構造
シェーラーは、世界を構成する存在を、植物、動物、人間といった階層構造として捉え、それぞれの階層を特徴づける原理として「衝動」という概念を用いました。植物は、光合成や生長といった、生命維持のための基本的な衝動に支配されています。動物は、より複雑な衝動、例えば本能や感情に従って行動します。
人間もまた、これらの衝動を共有していますが、他の生物には見られない「精神」の次元を備えています。この精神こそが、人間を他の生物とは異なる独自の地位に位置づけるものです。
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「開かれた精神」:世界を開示する存在
シェーラーは、人間の精神を「開かれた精神」と表現しました。これは、人間が世界を客観的に認識し、その意味や価値を理解することができる能力を指しています。動物は、環境に適応するために必要な限られた範囲でしか世界を認識できませんが、人間は、世界をありのままに把握し、その本質を見抜くことができます。
さらに、人間は、自己を客観視し、自身の存在意義や人生の目的について問いかけることができます。このような自己超越的な思考は、動物には見られず、「開かれた精神」を持つ人間固有の特徴と言えます。