## シェイクスピアのリチャード三世を読む
リチャード三世の人物像
リチャード三世は、シェイクスピアの戯曲の中でも特に魅力的で複雑な悪役の一人として描かれています。彼は生まれつき身体的なハンディキャップを背負っており、そのことが彼自身の歪んだ野心と結びつき、冷酷で狡猾な人物へと変貌していく様子が描かれています。リチャードは自身の目的を達成するために、巧みな弁舌と策略を駆使し、周囲の人々を欺き、操っていきます。彼の言葉はしばしば詩的で魅力的ですが、その裏には常に邪悪な意図が隠されています。
歴史的背景と戯曲の解釈
「リチャード三世」は、15世紀後半のイングランドを舞台にした史劇であり、薔薇戦争と呼ばれる王位継承争いを描いた作品です。シェイクスピアは、史実を基にしながらも、劇的な効果を高めるために脚色を施しています。特に、リチャード三世の悪行は誇張して描かれており、テューダー朝の正当性を強調するプロパガンダとしての側面も指摘されています。
言語と修辞技法
シェイクスピアの戯曲の魅力の一つは、その豊かな言語表現にあります。「リチャード三世」においても、登場人物たちの言葉は力強く、詩的で、劇的な効果を高めています。リチャードの巧みな弁舌術、登場人物たちの心の葛藤を表現する独白、運命を予感させる不吉な言葉など、シェイクスピアの巧みな言語の使い方が随所に見られます。
テーマ
「リチャード三世」は、権力、野心、運命、正義といった普遍的なテーマを扱っています。リチャードの権力への飽くなき欲望、彼の策略によって引き起こされる悲劇、そして最終的な破滅は、権力の空しさと危険性を浮き彫りにしています。また、本作は悪の魅力、人間の心の闇、自由意志と運命の関係など、深遠なテーマについても考察を深めることができます。