## シェイクスピアのリチャード三世の主題
運命と自由意志
リチャードは自身の運命は星によって定められており、自分が生まれながらの悪人であると主張することで、自身の行動を正当化しようとします。彼は自分の意志に反して悪事を働くことを強いられているという印象を与えます。しかし劇が進むにつれて、リチャードの行動は、むしろ野心、策略、操作といった彼自身の選択の結果であることが明らかになっていきます。このため、運命と自由意志の間で揺れ動く複雑な関係が浮かび上がってきます。
野心と権力
野心はリチャードの原動力であり、彼は王位への渇望のために、あらゆる手段を講じる覚悟ができています。彼の容赦ない野心は、劇中で繰り広げられる裏切り、殺人、操作の連続に表れています。この劇は、権力を手に入れるためなら手段を選ばないことの危険性、そして権力の腐敗作用を探求しています。
罪悪感と良心
リチャードは冷酷な悪役として描かれていますが、彼を苦しめる罪悪感と良心の呵責の瞬間が垣間見えます。特に、母親と彼が殺害した人々の亡霊が夢に現れる場面は、彼の罪の深さを明らかにしています。この内的葛藤は、人間の心の複雑さを浮かび上がらせ、完全な悪人ですら内面に葛藤を抱えている可能性を示唆しています。
外見と現実
リチャードは生まれつきの醜さを利用して、周囲の人々を欺き、操作します。彼は自分の外見を武器にして、同情や信頼を得るためにそれを利用します。この劇は、外見が欺瞞となり得ること、そして真の性格は表面の下に隠されている可能性があることを強調しています。
言語と修辞
リチャードは言葉巧みな人物であり、魅力的で説得力のある話し方で、周囲の人々を巧みに操ります。彼は言語の力を利用して、嘘を広め、他人を自分の意志に従わせます。劇は、プロパガンダと操作の道具として言語がどのように使用できるかを浮き彫りにしています。
正義と報復
リチャードの悪事は、最終的に正義の鉄槌が下されることで終止符が打たれます。彼の治世は短命に終わり、リッチモンド率いる反乱軍が彼を倒します。リチャードの死は、悪事には必ず報いがあるという考え方を強化しており、劇は道徳的秩序の回復を暗示して終わります。