## シェイクスピアのペリクリーズの表現
###
ロマンス劇としての表現
「ペリクリーズ」はシェイクスピアのロマンス劇に分類され、その表現にもロマンス劇特有の特徴が見られます。
* **劇的な筋書き展開:** ペリクリーズの旅や離散家族との再会など、波乱万丈な物語が展開されます。これは観客の感情に直接訴えかける、ロマンス劇の特徴的な手法です。
* **奇跡的な要素:** 物語には海難や出産、死からの復活など、超自然的な要素が織り交ぜられています。これらの奇跡的な出来事は、運命の力や神の介入を暗示し、物語に神秘性を与えています。
* **喜劇と悲劇の融合:** 作中では喜劇的な場面と悲劇的な場面が交互に現れ、観客の感情を揺さぶります。最終的にはペリクリーズと娘マリナの再会によって大団円を迎えますが、そこまでの道のりは苦難に満ちています。
###
詩的な言語表現
「ペリクリーズ」はシェイクスピアの作品の中でも特に詩的な言語表現が際立っています。
* **比喩表現の多用:** 自然現象や神話、歴史などをモチーフとした比喩表現が頻繁に登場します。これらの比喩は、登場人物の心情や状況をより鮮やかに描き出す効果があります。
* **韻律の美しさ:** 作品全体を通して、抑揚のあるblank verse（無韻詩）が用いられています。これは自然な会話のリズムに近く、登場人物の感情をよりリアルに表現することができます。
* **音楽的な効果:** 作品には歌や音楽が効果的に挿入され、物語を盛り上げています。特に、娘マリナの音楽の才能は、物語の重要な鍵となっています。
###
舞台装置と演出
「ペリクリーズ」は、舞台装置や演出の面でも工夫が凝らされています。
* **舞台転換の多様さ:** 物語は様々な場所を舞台として展開するため、舞台転換が頻繁に行われます。これは、観客に目新しさを感じさせ、物語の世界に引き込む効果があります。
* **象徴的な舞台美術:** 舞台美術はシンプルながらも象徴的なものが多く用いられます。例えば、嵐の場面では実際に舞台上に嵐を再現するのではなく、象徴的な小道具や照明効果によって表現されます。
* **観客の想像力への訴求:** 当時の演劇では、現代のような大規模な舞台装置は存在しませんでした。そのため、「ペリクリーズ」の舞台装置も比較的簡素なものに留どまり、観客は自らの想像力を働かせて物語の世界観を補完する必要がありました。