シェイクスピアのヘンリー六世 第二部と言語
登場人物の社会的地位による言語の違い
「ヘンリー六世 第二部」では、登場人物の社会的地位によって言語が明確に区別されています。高貴な生まれの登場人物は、洗練された言葉遣いをし、比喩や韻律を駆使して話します。一方、下層階級の登場人物は、粗野で直接的な表現を用います。
例えば、ヨーク公爵は反乱を扇動する際に、次のような雄弁な言葉で民衆を魅了します。
> “Noble peers, the cause why we are met
>
> Is not for idle oaths of allegiance”
これに対して、反乱に加わる庶民の指導者であるジャック・ケイドは、次のような粗野な言葉で自分の要求を突きつけます。
> “The first thing we do, let’s kill all the lawyers.”
このように、登場人物の言葉遣いが、彼らの社会的地位や教養を明確に示しています。
修辞技法の効果的な使用
シェイクスピアは、「ヘンリー六世 第二部」において、様々な修辞技法を効果的に使用しています。例えば、反復法や比喩、韻律などを駆使することで、登場人物の感情や劇的な状況をより鮮やかに表現しています。
例えば、ヨーク公爵夫人が夫の死を嘆く場面では、反復法が使われています。
> “Dead! Dead! Ay, dead, my lord! He is indeed.”
この「Dead」の反復は、彼女の深い悲しみと絶望感を強調しています。
また、ヘンリー六世が自分の無力さを嘆く場面では、比喩が使われています。
> “Was ever king that joy’d an earthly throne
>
> And could command no more content than I?”
ここで、彼は自分を操り人形にたとえて、自分の無力さを表現しています。
このように、シェイクスピアは修辞技法を駆使することで、劇的な効果を高め、登場人物の心情をより深く表現しています。
劇中劇における言語
「ヘンリー六世 第二部」には、「殺害された公爵ハンフリーの霊の呼び出し」などの劇中劇が含まれています。これらの劇中劇では、本編とは異なる言語スタイルが用いられています。
例えば、「殺害された公爵ハンフリーの霊の呼び出し」では、登場人物たちは儀式的な、韻文調の言語を使用します。
> “Dark night, dread night, the silence of the night,
>
> Wherein the furies mask in hellish light.”
これは、劇中劇が超自然的な出来事を扱っていることを強調し、不気味な雰囲気を作り出す効果があります。このように、劇中劇の言語は、本編のリアリズムとは対照的な、幻想的で儀式的な雰囲気を醸し出しています。