シェイクスピアのヘンリー五世の話法
合唱隊
シェイクスピアの『ヘンリー五世』における最も特徴的な話法上の特徴の一つに、劇の進行において重要な役割を果たす「コーラス」の存在が挙げられます。単一の俳優によって演じられるこのコーラスは、プロローグとエピローグ、そして各幕の始まりと終わりに登場し、観客の想像力を刺激し、舞台上では表現できない場面や戦闘の描写を補完する役割を担っています。
たとえば、プロローグにおいてコーラスは観客に、限られた舞台空間の中で壮大な物語を展開しなければならないという「役者の至らなさ」を許すよう求めています。
> **O for a Muse of fire, that would ascend
> The brightest heaven of invention,
> A kingdom for a stage, princes to act
> And monarchs to behold the swelling scene!**
このように、コーラスは観客に対して、劇の枠組みを超えた想像力によって舞台を補完するよう促し、観客を劇の世界に引き込みます。
対照的な言語
『ヘンリー五世』では、登場人物の社会的地位や状況に応じて、異なる言語が巧みに使い分けられています。王侯貴族は華麗で修辞的な言語を操る一方で、庶民は素朴で率直な言葉遣いをします。
たとえば、ヘンリー五世がフランス国王に宣戦布告する場面では、彼の言葉は力強く、威厳に満ちています。
> **Your crown too, is not quite out of the danger so long as France makes war upon us with it, and five hundred thousand crowns are levied in my realm.**
一方、兵士のピストルや باردルフといった庶民の登場人物は、粗野でユーモラスな言葉遣いを特徴としています。
> **Bardolph: By this fire, I would forswear it being a soldier to be a candle-stick, I were but in an eternal election for King Cophetua’s beggar.**
このように対照的な言語を用いることによって、シェイクスピアは登場人物の性格や社会的な立場を際立たせると同時に、戦争という壮大なテーマと庶民の日常生活との対比を鮮明に描き出しています。