## シェイクスピアのテンペストが扱う社会問題
植民地主義と帝国主義
『テンペスト』は、難破したイタリアの貴族たちが、魔法使いプロスペローとその娘ミランダが住む島に漂着するところから始まります。プロスペローは、もともとミラノ公でしたが、弟アントーニオの裏切りにあい、島に追放されました。プロスペローは、精霊エアリアルを使って嵐を起こし、アントーニオたちを島に漂着させたのです。
このプロットは、当時のヨーロッパ社会で進行していた植民地主義と帝国主義を反映していると解釈することができます。プロスペローが島に漂着した時、すでに島には原住民のキャリバンが住んでいました。プロスペローはキャリバンを奴隷にし、島の支配者となります。このプロスペローとキャリバンの関係は、ヨーロッパ人入植者と先住民の関係を象徴していると考えられます。プロスペローは、魔法の力や言葉を使ってキャリバンを支配し、搾取しています。キャリバンは、プロスペローの支配に抵抗しようとしますが、その試みはことごとく失敗に終わります。
劇中で、キャリバンはプロスペローを「盗人」と呼び、自分の島を奪ったと非難します。このキャリバンの言葉は、植民地主義に対する痛烈な批判として解釈することができます。また、プロスペローがキャリバンを「野蛮人」と呼び、教養を施そうとする様子は、ヨーロッパ人入植者が先住民に対して抱いていた優越意識を表していると言えるでしょう。
階級と権力
『テンペスト』では、プロスペローとキャリバンだけでなく、他の登場人物たちもそれぞれの立場や階級に応じて複雑な人間関係を築いています。プロスペローは、精霊エアリアルや妖精たちを使役し、島で絶対的な権力を持っています。一方、エアリアルはプロスペローに仕えることで自由を約束されていますが、その関係は対等ではありません。
また、難破した貴族たちの間でも、身分や権力を巡る争いが繰り広げられます。アントーニオは、兄であるプロスペローから公の座を奪おうと企み、ナポリ王の息子ファーディナンドは、ミランダとの結婚を通して自身の権力を拡大しようとします。これらの登場人物たちの思惑や欲望が交錯することで、物語はさらに複雑な展開を見せていきます。
劇中で描かれる権力関係は、当時の社会における階級制度や支配構造を反映していると考えられています。プロスペローは、魔法の力や知識を使って他の登場人物たちを操り、自分の思い通りに事を運ぼうとします。このプロスペローの姿は、当時の支配階級が民衆に対して行使していた権力構造を象徴していると言えるでしょう。