## シェイクスピアのジョン王の原点
ジョン王の治世を題材とした初期の戯曲
シェイクスピアの『ジョン王』は、完全に独自の創作ではなく、先行する作品、特に『ジョン王の騒乱と死の劇』(The Troublesome Reign of John, King of England) という2部構成の戯曲に大きな影響を受けています。『ジョン王の騒乱と死の劇』は1591年に匿名で出版されましたが、一部の学者はシェイクスピア自身が作者である可能性も示唆しています。
史劇としてのジョン王
『ジョン王』は史劇に分類され、12世紀末から13世紀初頭にかけてイングランドを統治した実在の王、ジョン失地王の治世を題材としています。しかし、史実と完全に一致しているわけではなく、劇的な効果を高めるためにシェイクスピアが脚色を加えている部分も少なくありません。
主な情報源
シェイクスピアが『ジョン王』を執筆するにあたって参考にしたと考えられる主な情報源は以下の通りです。
* **Raphael Holinshedの『年代記』 (Chronicles of England, Scotland, and Ireland) (1577年版)**: これは当時のイングランドで広く読まれていた歴史書であり、シェイクスピアは他の史劇作品でもこの書物を参考にしています。『年代記』はジョン王の治世、特にマグナ・カルタの署名やフランスとの戦争について詳しく記述しています。
劇中の出来事と史実とのずれ
シェイクスピアの『ジョン王』は史実を基にしていますが、劇的な効果を高めるためにいくつかの変更や脚色が加えられています。例えば:
* 劇中では、ジョン王がアーサーの殺害を密命する場面が描かれていますが、実際にはアーサーの死の真相は明らかになっていません。
* また、劇中で重要な役割を果たす私生児のフォーコンブリッジは、実在の人物をモデルにしていますが、彼の性格や行動はシェイクスピアによって大きく脚色されています。
これらの史実とのずれは、シェイクスピアが単に歴史的事実を再現するのではなく、ジョン王の治世を通して権力、野心、裏切りといった普遍的なテーマを探求しようとしていたことを示唆しています。