シェイクスピアのジュリアス・シーザーの話法
修辞技法
シェイクスピアは、登場人物の性格を明らかにし、ドラマを作り出し、観客を物語に引き込むために、『ジュリアス・シーザー』全体を通して幅広い修辞技法を用いています。劇中で使用されている注目すべき修辞技法をいくつかご紹介します。
* **対比:** 対比とは、アイデアを強調したり、劇的な効果を生み出すために、2つの対照的なものを並べて配置することです。シェイクスピアは、この劇の中で対比を巧みに用いて、善と悪、忠誠心と裏切り、自由と野心をテーマにしています。これらのテーマを探求するために、劇中の最も顕著な対比の1つは、シーザーとブルータスの人物像です。シーザーは、力強くカリスマ性のある指導者として描かれているのに対し、ブルータスは、高貴で原則的な人物として描かれています。この対照は、彼らの対話、行動、そして彼らに対する他の登場人物の反応において見られます。たとえば、シーザーの暗殺後、ブルータスは群衆に次のように語りかけます。
> 国民よ、ローマ人よ、同胞よ、耳を傾けよ。
> 私は弁明のために来たのだ。シーザーを愛していた。
> だが、ローマをもっと愛していたのだ。
一方、アントニーは次のように述べています。
> 友人よ、ローマ人よ、同胞よ、耳を傾けてくれ。
> 私はシーザーを葬るために来たのであって、彼を称賛するためではない。
ブルータスの演説は、論理、理性、愛国心に訴えかける対比を特徴としています。一方、アントニーの演説は、感情、修辞疑問、そしてシーザーの美徳の微妙な思い起こしを利用して、群衆を扇動します。この人物像の対比は、劇中の政治的な陰謀と道徳的なジレンマを浮き彫りにしています。
* **隠喩:** 隠喩とは、他のものに置き換えることで、物事や概念を比較する比喩の一種です。シェイクスピアは、鮮やかなイメージを生み出し、登場人物の考えや感情を伝えるために、隠喩を使用しています。たとえば、アントニーがシーザーの傷を「口」と表現すると、裏切りの衝撃的なイメージと、それらがローマの幸福についてどのように「語る」かが生まれます。
> ああ、赦してくれ、私の血まみれの姿よ。
> 冷たくて生気のないシーザーのそばで、このように不格好に立ち尽くしている私を。
この隠喩を通して、アントニーは、シーザーの傷が、まるで言葉を話すかのように、陰謀者に対する非難として機能すると主張しています。このイメージは強力であり、アントニーの言葉をさらに強調し、観客の感情的な反応を高めます。
* **直喩:** 直喩とは、「like」や「as」などの単語を使用して、物事や概念を比較する比喩の一種です。隠喩と同様に、直喩は登場人物の考えや感情を説明するために使用されます。有名な例としては、カシウスがキャスカに次のように言う言葉があります。
> なぜ、人間はあのように力を持つことができるのか？
> シーザーという男は、私たちと大きく違うのだろうか？
> 私たちは、彼の輝く光の下に身を縮めている。
カシウスは、シーザーを太陽に、自分自身と他の陰謀者を太陽の下で小さく無力な存在として描くことで、恐怖感と、シーザーの増大する力を抑える必要があるという感覚を伝えています。
韻律と詩脚
シェイクスピアは、『ジュリアス・シーザー』を含む彼の戯曲の多くで、韻律詩、特に弱強五歩格を使用することで知られています。弱強五歩格は、1行に10音節、強弱が交互に繰り返される韻律パターンです。しかし、シェイクスピアの弱強五歩格の扱いは柔軟かつ多様です。彼はしばしば、劇的な効果のために、または登場人物の思考や感情を強調するために、弱強五歩格を破ったり、他の韻律パターンを織り交ぜたりしています。
劇中の韻律と詩脚は、登場人物の社会的立場や感情の状態によって異なります。たとえば、シーザーのような上位階級の登場人物は、しばしば弱強五歩格で話し、彼らの権威と地位を反映しています。
> この日まで余は進み、余の道は開かれている。
対照的に、下層階級の登場人物はしばしば散文で話し、彼らの平凡さを反映しています。これらの韻律パターンの変化は、階級間の社会的な分断を強調し、登場人物の関係の力関係に微妙なニュアンスを加えています。
シェイクスピアは、登場人物の感情の高まりを示唆するために、弱強五歩格から短縮された行や不規則な韻律パターンに逸脱することもよくあります。たとえば、アントニーがシーザーの遺体の上で有名な独白を始める際に、彼は次のように述べています。
> 泣いてくれ、ローマよ。そして、私が話す言葉を
> あなた方の耳に流し込むのだ！
この逸脱は、アントニーの悲しみと怒りを強調し、彼の言葉に感情的な強さを与えています。これらの変化は、登場人物の感情の状態の変化を反映しており、劇中の緊張感とドラマを高めています。
イメージ
シェイクスピアは、鮮やかなイメージと象徴的な意味を生み出すために、イメージを巧みに使用しています。劇全体を通して使用されているイメージは、テーマを探求し、登場人物の感情を明らかにし、劇的な雰囲気を作り出す上で重要な役割を果たしています。
たとえば、劇の冒頭で、シーザーの勝利パレード中の自然の力のイメージは、登場人物が直面する不安定さと差し迫った運命の感覚を予感させます。
> 荒れ狂うティベリス川が海に向かって
> その岸を飲み込み、ローマ自体を脅かす時、
> シーザーも同様に…
この鮮やかなイメージは、人間の野心の破壊的な可能性を暗示し、劇全体を貫く差し迫った危険と不安定さの雰囲気を確立しています。さらに、自然のイメージと政治的な動乱をつなぐことで、シェイクスピアは、人間の世界と自然界が複雑に絡み合っていることを示唆しています。
その他の注目すべき話法上の特徴
* **雄弁な言語:** 登場人物、特にシーザーとブルータスは、非常に雄弁で修辞的な話し方をします。彼らは複雑な言葉遣いを使い、拡張された隠喩を使用し、聴衆にアピールします。この言語は、劇の政治的な文脈を確立し、アイデアの力と言葉による説得の重要性を強調しています。
> 「ブルータスが病気だったとしたら、
> ブルータスを悩ませる何かがあれば、
> ブルータスはそれほど愛国心がなく、
> 彼自身のためではなく、ローマのために
> 自分自身の門に立つだろう」
この節で、ブルータスは並列構造と修辞疑問を用いて、自分の行動の根拠を巧みに正当化し、愛国心に訴えています。
* **散文と詩:** 劇の多くは韻律詩で書かれていますが、シェイクスピアはリアリズムと自然さを生み出すために、散文の箇所も織り交ぜています。散文の使用は、しばしば登場人物の社会的立場を反映しており、下層階級の登場人物はより頻繁に散文で話し、上位階級の登場人物は詩で話します。
* **皮肉:** シェイクスピアは、期待と現実の対比から生じる劇的な皮肉を効果的に使用しています。皮肉は、観客の緊張感とサスペンスを高めるために、登場人物の言葉や行動に埋め込まれています。たとえば、シーザーは「私は北部星のように定まっている」と宣言していますが、これは彼自身の差し迫った運命を考えると皮肉な発言であり、彼の自信過剰と死角を浮き彫りにしています。
これらの話法上の特徴はすべて、登場人物の性格を明らかにし、ドラマを作り出し、観客を『ジュリアス・シーザー』の物語に引き込む上で重要な役割を果たしています。