## シェイクスピアのアントニーとクレオパトラの周辺
創作時期と出典
「アントニーとクレオパトラ」がシェイクスピアによって書かれた正確な年は不明ですが、1606年から1607年にかけて執筆されたと広く考えられています。この推測は、1607年5月に出版登録された「ペリクリーズ」と文体や韻律が似ていることに基づいています。
シェイクスピアはこの劇の主要な筋書きを、トーマス・ノースによるプルタルコスの「対比列伝」の英訳版（1579年）から得ました。ノースの「対比列伝」は、ローマの将軍マルクス・アントニウスとエジプトの女王クレオパトラ7世の、情熱的で最終的には悲劇的な恋愛を描いたものです。
歴史的背景
「アントニーとクレオパトラ」は、紀元前1世紀の終わり、ローマ共和国が内戦と権力闘争に揺れていた時代を舞台としています。ジュリアス・シーザーの暗殺後、アントニウスはオクタヴィウス（後の初代ローマ皇帝アウグストゥス）やレピドゥスと共に、ローマを統治する第二次三頭政治を結成しました。
アントニウスは、ローマ帝国東部の統治を任され、エジプトの女王クレオパトラと恋に落ちます。クレオパトラは、プトレマイオス朝の最後のファラオであり、アントニウスの支援を得て、エジプトの独立と権力維持を望んでいました。
しかし、アントニウスとクレオパトラの関係は、ローマではスキャンダルと見なされ、オクタヴィウスはこれを利用して、アントニウスに対する世論を悪化させました。紀元前31年、アクティウムの海戦でアントニウスとクレオパトラの連合軍はオクタヴィウスに敗北し、二人はエジプトのアレクサンドリアに逃れました。
アントニウスは、オクタヴィウスの軍隊に包囲され、クレオパトラが死んだという誤った報せを受け、自害しました。クレオパトラもまた、オクタヴィウスの捕虜になることを嫌い、毒蛇に身を委ねて自殺しました。