シェイクスピアのじゃじゃ馬ならしの話法
登場人物の話し方に見る力関係
「じゃじゃ馬ならし」では、登場人物間の力関係が、その話し方によって明確に描き出されています。特に、男性優位な社会構造の中で、女性であるカテリーナが置かれている立場と、そこから生まれる反骨精神が、彼女独特の表現方法に表れています。
例えば、劇の冒頭、求婚者に対して辛辣な言葉を浴びせるカテリーナの姿は、当時の女性としては異質であり、彼女の強い意志を感じさせます。しかし、その言葉の裏には、自らの意思を無視して結婚を強要しようとする社会に対する、精一杯の抵抗が隠されているとも解釈できます。
言葉遊びと皮肉に満ちた会話劇
シェイクスピアの作品の魅力の一つに、言葉遊びと皮肉に満ちた巧みな会話術が挙げられます。「じゃじゃ馬ならし」においても、登場人物たちの機知に富んだやり取りが、物語に深みを与えています。
特に、ペトルーチオは、カテリーナの言葉尻を捉え、皮肉を込めて返すことで、彼女の主張を覆し、心理的に優位に立とうとします。一方、カテリーナも負けじと反論を試みますが、ペトルーチオの巧みな話術の前に、次第に窮地に追い込まれていきます。
修辞技法が彩る登場人物の心情
「じゃじゃ馬ならし」では、比喩、擬人化、反語などの多様な修辞技法が駆使され、登場人物たちの心情や変化をより鮮やかに浮かび上がらせています。
例えば、ペトルーチオに屈服させられていく過程で、カテリーナは自らを「飼いならされる動物」に例える比喩を用いるようになります。これは、彼女の精神的な変調を象徴的に示すと同時に、当時の社会における女性の立場を暗示する表現としても解釈できます。