## シェイクスピアの アントニーとクレオパトラ のテクスト
アントニーとクレオパトラ:ローマとエジプトの対比
シェイクスピアの『アントニーとクレオパトラ』は、ローマの将軍マルクス・アントニウスとエジプトの女王クレオパトラ7世との情熱的な恋愛を描いた作品です。劇中で対比的に描かれるローマとエジプトは、単なる地理的な場所ではなく、それぞれ異なる価値観や生活様式を象徴しています。
ローマは、理性、秩序、義務、自制心を重視する男性的な世界として描かれています。アントニウスは、ローマの指導者として、その期待に応えるべく、政治的な策略や戦争に明け暮れることを求められます。一方、エジプトは、感情、官能性、贅沢、享楽を重視する女性的な世界として描かれています。クレオパトラは、その美貌と魅力でアントニウスを誘惑し、彼をローマの義務から引き離そうとします。
劇中では、登場人物のセリフや行動を通して、この対比が巧みに表現されています。例えば、アントニウスは、クレオパトラと過ごすうちに、ローマの義務を忘れ、享楽に耽るようになります。彼は、自分の行動を正当化しようとしますが、内心では、ローマの価値観とエジプトの価値観との間で葛藤しています。
政治と個人の情熱の対立
『アントニーとクレオパトラ』は、政治的な野心と個人的な情熱との対立を描いた作品でもあります。アントニウスは、ローマ帝国の支配を夢見て、オクタヴィウスやレピダスと手を組みます。しかし、彼は、クレオパトラへの愛に溺れ、政治的な野心を失っていきます。
一方、クレオパトラは、エジプトの独立を守り、自分の権力を維持するために、アントニウスを利用します。彼女は、アントニウスを巧みに操り、自分の思い通りに動かそうとします。
劇中では、アントニウスとクレオパトラの愛が、ローマとエジプトの政治的な対立と複雑に絡み合い、悲劇的な結末へと繋がっていきます。アントニウスは、愛と義務の間で引き裂かれ、最終的には、自らの命を絶ちます。クレオパトラもまた、愛する人を失い、絶望の淵に突き落とされます。
言葉の力:イメージと修辞法
シェイクスピアは、『アントニーとクレオパトラ』において、登場人物の心理描写や情景描写、劇的な効果を高めるために、多彩なイメージや修辞法を駆使しています。
例えば、劇中では、頻繁に海や川、船などのイメージが登場します。これらのイメージは、アントニウスとクレオパトラの不安定な関係や、彼らを待ち受ける運命を象徴的に表現しています。
また、シェイクスピアは、比喩、擬人化、反語などの修辞法を巧みに用いることで、登場人物の感情をより鮮やかに表現しています。特に、クレオパトラのセリフは、その美しさと力強さで知られており、劇全体に華やかさと緊張感を与えています。