ザビエルの聖フランシスコ・ザビエル書簡集が扱う社会問題
ザビエルの目撃したインド社会の現実
ザビエルの書簡集は、16世紀のインド社会における厳しい現実を克明に映し出しています。彼は、ポルトガル植民地におけるキリスト教布教の困難、異文化理解の難しさ、そして彼が直面した様々な社会問題について赤裸々に書き綴っています。
カースト制度の根深さとその影響
書簡の中で繰り返し言及されるのが、インド社会に深く根付いたカースト制度とその影響です。ザビエルは、カースト制度が人々の生活を規定し、社会全体を分断している様子を目の当たりにします。特に、最下層に位置付けられる人々が受ける差別や貧困の深刻さを訴え、キリスト教の教えに基づいた平等な社会の実現を切望しています。
貧困と病気の蔓延
当時のインドでは、貧困と病気は深刻な社会問題でした。ザビエルは、路上生活を強いられる人々、十分な栄養を取れずに苦しむ子どもたち、そして蔓延する伝染病の実態を目の当たりにします。彼は医療活動にも積極的に取り組みましたが、その状況は彼の心を深く痛めるものでした。
ポルトガル人の倫理観に対する苦悩
ザビエルは、布教活動を行う中で、ポルトガル人植民地支配者の倫理観にも疑問を抱きます。彼らの多くは、キリスト教徒としての振る舞いよりも、経済的な利益を優先しているように映りました。ザビエルは、彼らの貪欲さが現地の人々の反感を買っていることを危惧し、真のキリスト教精神に基づいた行動を強く求めています。
奴隷貿易への批判
ザビエルは、当時横行していた奴隷貿易を厳しく批判しました。彼は、すべての人間は神の被造物として平等であり、奴隷として扱うことは許される行為ではないと主張します。彼の書簡は、ポルトガル国王やローマ教皇など、権力者に対して奴隷貿易の禁止を訴えるものでした。