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サルトルの弁証法的理性批判を読む

サルトルの弁証法的理性批判を読む

サルトルの思想における位置づけ

「弁証法的理性批判」は、サルトルが晩年に発表した大著であり、歴史や社会における人間の主体的な実践と、それを規定する客観的な構造との関係を、弁証法的に解明しようと試みた書です。実存主義を唱え、人間の自由と責任を強調した前期から、マルクス主義の影響を受け、社会構造や歴史的唯物論を取り込もうとした後期へと、サルトルの思想が大きく転換していく中で書かれた作品であり、その転換点として位置づけられます。

内容の概説

本著は、大きく2つの部分に分かれています。第一部は「実践の理論」と題され、人間のあらゆる行為は、目的を設定し、手段を選択し、結果を導き出すという「実践」として捉えられることを論じています。サルトルは、人間は常に状況の中に置かれているものの、その状況を完全に規定されるのではなく、自らの選択によって状況を変化させることができると主張し、それを「実践的態」と呼びます。

第二部は「歴史の理論」と題され、個人の実践が集合し、相互作用することで、歴史が形成されていく過程を分析しています。サルトルは、歴史は単なる出来事の羅列ではなく、人間の主体的な実践によって作られるものであるとしつつも、個人の意図を超えた客観的な法則性や構造が存在することも認めています。

難解さとその理由

「弁証法的理性批判」は、サルトルの主著の中でも特に難解な作品として知られています。その理由としては、ヘーゲルやマルクスの弁証法、フッサールの現象学、レヴィ=ストロースの構造主義など、多岐にわたる思想からの影響が挙げられます。また、サルトル独自の用語や概念が多く用いられていることも、読解を困難にしている要因の一つです。

影響と評価

本著は、発表当時から大きな反響を呼び、その後の思想界に多大な影響を与えました。特に、構造主義と実存主義の統合を試みた点が高く評価されています。一方で、難解な文章や抽象的な議論が多く、その内容については様々な解釈がなされており、現在も議論が続いています。

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