## サルトルの弁証法的理性批判の思索
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実践の優位性
サルトルは、伝統的な哲学、特にデカルト的な理性主義が、人間の意識を「考える主体」として捉え、世界から遊離した抽象的な存在として扱ってきたことを批判します。彼にとって、人間の本質は「実践」の中にこそ見出されます。 私たちは、世界と具体的な関係性を結び、目的を持って行動することで、自らの存在を規定していく存在です。
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疎外と実践の総体化
サルトルは、人間存在を規定する重要な概念として「疎外」を挙げます。疎外とは、本来、人間が自由な存在であるにもかかわらず、社会構造や他者からの抑圧によって、自らの可能性を閉ざされ、物のように扱われる状態を指します。 彼は、マルクスの唯物史観から影響を受けつつも、疎外の要因を経済的側面だけでなく、人間関係や心理的な側面にも広げて捉えました。
サルトルは、疎外を克服し、真の自由を獲得するためには、「実践の総体化」が必要だと主張します。 実践の総体化とは、個々の実践が相互に関連し合い、歴史的な文脈の中で位置づけられることで、全体として意味を持つようになる過程を指します。 この過程を通して、私たちは、自己の自由と責任を自覚し、他者との連帯に基づいた社会を創造していくことができるのです。