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サリンジャーのライ麦畑でつかまえての対称性

サリンジャーのライ麦畑でつかまえての対称性

ホールデン自身の内面における対称性

ホールデンは大人社会の偽善を「インチキ」と呼び、嫌悪感を示す一方で、純粋さを保っていると感じる子供への強い憧憬を抱いています。

例えば、ホールデンは、妹のフィービーが回転木馬に乗る様子を眺めながら、彼女がたとえ危険を冒してでも、無邪気に馬に手を伸ばそうとする姿に心を打たれます。

しかし、彼自身もまた、大人になることを恐れて現実逃避を繰り返し、純粋さを保つためには「子供」でい続けたいという矛盾した感情に苦しんでいます。

この、大人を嫌悪しながらも子供でいたいと願うホールデンの内面には、彼自身の未成熟さゆえの葛藤と、純粋さへの憧憬と現実の狭間で揺れ動く姿が対称的に描かれています。

物語構造における対称性

「ライ麦畑でつかまえて」は、ホールデンがペンシルベニア州の寄宿学校を退学させられる場面から始まり、ニューヨークを彷徨った末に精神的に不安定な状態に陥り、物語は唐突に終わります。

物語の冒頭と結末におけるホールデンの精神状態は不安定であり、彼がニューヨークでの放浪を通して何かを克服したのか、あるいは更なる苦悩を抱え込むことになったのかは明確に示されていません。

このような始まりと終わりの状態の類似性、そして具体的な解決策が提示されないまま終わる物語構造は、読者にホールデンの未来に対する不安と、彼が抱える普遍的な青春期の葛藤を強く印象付ける効果を生み出しています。

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