サミュエルソンの経済学の対極
サミュエルソン経済学と対照的な経済学
「サミュエルソンの経済学」は、新古典派経済学を代表する教科書として、世界中で広く読まれてきました。その特徴は、数学的なモデルを用いた分析にあります。しかし、経済学には、サミュエルソンの経済学とは異なる視点から経済現象を分析する学派も存在します。
オーストリア学派
サミュエルソンの経済学と対照的な学派として、オーストリア学派が挙げられます。オーストリア学派は、19世紀後半から20世紀初頭にかけてウィーンで活動した経済学者たちによって創始されました。カール・メンガー、オイゲン・フォン・ベーム=バヴェルク、フリードリヒ・フォン・ヴィーザーなどが代表的な経済学者として知られています。
方法論的個人主義
オーストリア学派は、方法論的個人主義と呼ばれる立場をとります。これは、社会現象は、個人の行動とその相互作用の結果としてのみ理解されるべきであるという考え方です。彼らは、個人の価値観や選好が経済現象を理解する上で重要であると考えました。
限界効用理論
オーストリア学派は、限界効用理論の発展に貢献しました。限界効用理論は、財やサービスの価値は、それがどれだけ追加的に満足をもたらすかによって決まるとする考え方です。彼らは、この理論を用いて、価格や配分の問題を分析しました。
市場プロセスへの重視
オーストリア学派は、市場メカニズムを重視します。彼らは、市場における価格の変動が、資源の効率的な配分を導くと考えました。また、政府による市場介入は、かえって経済を歪めると批判しました。
資本理論と景気循環論
オーストリア学派は、資本理論と景気循環論にも独自の貢献をしました。彼らは、資本を生産構造における時間的な要素として捉え、景気循環は、中央銀行による信用創造によって引き起こされると考えました。
サミュエルソン経済学との相違点
オーストリア学派は、サミュエルソンの経済学とは、方法論、分析対象、政策提言など、様々な点で対照的です。サミュエルソンの経済学が、均衡分析や計量経済学を用いるのに対し、オーストリア学派は、論理的な推論や歴史的な分析を重視します。
現代への影響
オーストリア学派は、20世紀後半以降、再び注目を集めるようになりました。特に、フリードリヒ・ハイエクなどの経済学者は、市場経済の優位性を主張し、政府の役割を制限するべきだとする考え方が、新自由主義の台頭とともに影響力を持つようになりました。