サドのジュスティーヌの発想
サドの思想における善悪の逆転
サドの作品群において、従来の道徳観念、とりわけキリスト教的な善悪の価値観は徹底的に転倒され、嘲笑の対象となります。「ジュスティーヌ」においても、主人公のジュスティーヌが体現する「美徳」は、冷酷で不道徳な社会においては嘲笑と搾取の対象でしかありません。彼女は、その純粋さゆえに、あらゆる悪徳に染まった人々の餌食となり、悲惨な運命を辿ることになります。
自然の法則と社会の不条理
サドは、人間を含む自然界は、弱肉強食の法則に支配されていると捉えていました。ジュスティーヌの受難は、まさにこの自然の法則を人間社会に投影した結果とも言えます。力なき善は、強大な悪の前に敗北することを宿命づけられているのです。しかし、サドは同時に、社会制度や権力が、自然の法則を歪め、より不条理なものへと変質させていることも指摘しています。