サドのジュスティーヌの技法
語り
サドは『ジュスティーヌ』において、三人称全知の語り手を用いています。 この語り手は、登場人物たちの思考や感情に自由にアクセスし、物語世界全体を俯瞰的に見渡すことができます。 例えば、ジュスティーヌが森の中で盗賊たちに遭遇する場面では、彼女の恐怖心だけでなく、盗賊たちの残虐な計画も同時に描写されます。 このような語り方は、登場人物たちの行動や心理を客観的に提示すると同時に、読者に対して物語世界への深い没入を促します。
構成
『ジュスティーヌ』は、ジュスティーヌの旅路を追う形で物語が展開される、いわばピカレスク小説の構成を取っています。 彼女は旅の途中で様々な人物と出会い、その度に過酷な経験を強いられます。 各エピソードは、ジュスティーヌが新たな苦難に直面し、その度に彼女の美徳が試されるというパターンを繰り返します。 この反復的な構造は、当時の社会における悪の蔓延と、無垢な人間が絶えず苦しめられる現実を強調する効果を持っています。
対比
サドは『ジュスティーヌ』において、ジュスティーヌと彼女の妹ジュリエットの対比を効果的に用いています。 ジュスティーヌは美徳を貫き通そうとする一方で、ジュリエットは享楽主義的な生き方を選び、結果として社会的な成功を収めます。 この対比は、当時の道徳観念と現実社会の矛盾を浮き彫りにすると同時に、読者に対して倫理的な問いを投げかける役割を担っています。
描写
サドは『ジュスティーヌ』において、暴力や性的な描写を克明に描写することで知られています。 これらの描写は、読者に不快感を与えることを意図したものであり、当時の社会に蔓延する偽善性を暴き出すための手段として用いられています。 特に、ジュスティーヌが経験する暴力は、権力者が弱者を搾取する現実を象徴的に表しています。