サッカレーのヘンリー・エズモンドの原点
サッカレーの生い立ちと経験
ウィリアム・メイクピース・サッカレーは1811年、インドのカルカッタで裕福な東インド会社員の家庭に生まれました。幼い頃にイギリスへ渡り、名門チャーターハウス・スクールやケンブリッジ大学で教育を受けました。これらの経験を通して、サッカレーはイギリス社会の階級構造や上流階級の習慣、そして当時の政治や文化に深く触れることになります。
18世紀イギリスへの関心
サッカレーは幼い頃から歴史、特に18世紀イギリスの歴史に強い関心を抱いていました。当時の文学や美術、風俗を研究し、その時代の雰囲気を深く理解していました。彼の作品には、当時の社会や文化に対する深い洞察が色濃く反映されています。
ジェームズ・エドワード・フリーザー『金枝篇』の影響
サッカレーは、スコットランドの人類学者ジェームズ・エドワード・フリーザーの著作『金枝篇』を愛読していました。同書は、世界各地の神話や儀礼を比較研究し、人間の思考や社会の進化を考察したものです。この作品から、サッカレーは歴史小説において、当時の社会や文化、人々の思考様式を深く掘り下げることの重要性を学んだと言われています。
史実とフィクションの融合
サッカレーは、歴史上の出来事や人物を題材にしながらも、そこに独自のフィクションを織り交ぜることで、リアリティあふれる物語を創造しました。「ヘンリー・エズモンド」では、マールボロ公爵やスウィフトなど、実在した歴史上の人物が登場し、物語に深みと広がりを与えています。
語り口の特徴
サッカレーは、皮肉とユーモアを交えた独特の語り口で知られています。登場人物たちの内面を鋭く観察し、彼らの行動や心理を時に冷めた目で、時に共感を持って描写しています。「ヘンリー・エズモンド」においても、作者自身の視点が随所に挿入され、物語に独特の奥行きを与えています。