サッカレーのバリーリンドンの美
サッカレーのバリーリンドンの美
ウィリアム・メイクピース・サッカレーの小説「バリー・リンドンの幸運と不幸」(1844年)は、その複雑な主人公と、18世紀のヨーロッパを鮮やかに、そしてしばしば容赦なく描写していることで高く評価されています。この小説の美学は、その魅力と永続的な力に大きく貢献しています。サッカレーが美的評価をどのように構築しているかを理解するために、小説の際立った特徴をいくつか掘り下げてみましょう。
風刺的な語り口による美の提示
サッカレーの文体は、その鋭い機知と辛辣な皮肉で際立っています。彼は、物語の語り手であるレドモンド・バリーの虚栄心、野心、自己欺瞞を常に強調する皮肉なトーンを採用しています。この風刺的な語り口を通して、サッカレーは、美と魅力の表面の下に潜む道徳的破綻や空虚さを露呈し、読者に表面的なものだけでなく、人間の性質を批判的に見据えるよう促します。
たとえば、バリーが伯爵未亡人に求愛する際、サッカレーは彼の仰々しい行動や空虚なジェスチャーを風刺的に描写し、読者に彼の見せかけの愛の信憑性を疑問視させています。美はしばしば見せかけのものとして描かれ、サッカレーは人間の弱さと欺瞞に鋭く焦点を当てています。
歴史的ディテールの生み出す美的効果
サッカレーは、18世紀の生活を詳細に描写することに細心の注意を払っています。衣装、建築、社会慣習、マナーなど、その時代の詳細な描写は、豊かで没入感のあるタペストリーを織りなし、読者をバリーの世界に直接引き込みます。この歴史的なリアリズムに対するサッカレーのこだわりは、小説の美的魅力を高め、時代を超越した要素を与えています。
バリーのヨーロッパ大陸の軍隊生活の描写は、その時代の軍事服装や戦術、そして戦争の残酷さと壮大さの両方を正確に描写したもので、特に印象的です。サッカレーは視覚的なディテールを巧みに使用して、読者を18世紀の美と残虐性の両方の世界に没頭させています。
対比構造による美の相対化
サッカレーは、バリーの物語全体を通して対比を効果的に利用し、美と醜さ、富と貧困、愛と暴力などのテーマを探求しています。貴族の贅沢な舞踏室と戦場の容赦のない現実、バリーの上流社会での一時的な成功と彼の最終的な没落を対比させることで、サッカレーは、人間の存在のはかなさと人生における表面的なものの空虚さを強調しています。
たとえば、バリーとレディ・リンドンのロマンスは、当初は情熱と美しさに包まれていますが、最終的には、欺瞞、嫉妬、後悔という暗い転換を遂げます。彼らの関係の軌跡は、美がどのように移ろいやすく、しばしば欺瞞的なものであるかを示しており、人間の感情と関係の複雑さを反映しています。
アイロニーとブラックユーモアによる美的効果
サッカレーの作品全体に染み渡るアイロニーとブラックユーモアも、その独特の美学に貢献しています。彼は、バリーのしばしば誤った冒険や不幸を、ユーモラスでありながらも辛辣な視点で描写し、人間の愚かさ、野心、皮肉な運命のいたずらを浮き彫りにしています。このアイロニーの使用は、魅力的な複雑さを加え、読者に物語の登場人物やその選択を批判的に評価するよう促します。
バリー自身の自己認識の欠如と、自分の行動の結果に対する歪んだ見方は、アイロニーの絶え間ない源泉となっています。彼は自分が洗練された紳士だと考えていますが、彼の行動はしばしば下劣で、自己中心的で、最終的には彼自身の破滅につながります。サッカレーは、バリーの自己欺瞞の物語を、人間の性質の不条理さを微妙に指摘した、ダークユーモアと痛烈な社会解説で提示しています。