サッカレーのバリーリンドンと人間
バリーリンドンの野心と虚栄心
バリー・リンドンは、立身出世を夢見る野心的な青年として描かれています。彼はアイルランドの貧しい家庭に生まれ、裕福で快適な生活を強く望んでいます。この野心は、彼を駆り立てる原動力となり、様々な行動、例えば決闘の偽装やレディ・リンドンへの打算的な求婚など、につながっていきます。しかし、彼の野心はしばしば行き過ぎ、周囲の人間を傷つけ、最終的に彼自身の没落を招く原因となります。
階級社会における人間の関係性
作品は、18世紀のヨーロッパ社会における階級の重要性を鮮やかに描き出しています。バリーは、上流階級への憧憬と同時に、自らの出自に対するコンプレックスを抱えています。彼は、爵位を得て貴族社会の一員となることを切望しますが、その過程で周囲の人間を欺いたり、利用したりします。これは、当時の社会における階級の壁の高さと、人々がどれだけ階級に縛られていたかを如実に示しています。
戦争の現実と兵士の心理
バリーは、七年戦争に従軍し、戦争の現実を目の当たりにします。戦争は、彼の価値観や人生観に大きな影響を与え、英雄的な行為よりも、むしろ暴力、死、そして人間の残酷さを経験します。サッカレーは、戦争を美化することなく、その悲惨な側面を冷静な筆致で描写し、戦争が人間にもたらす深い傷跡を浮き彫りにしています。